殺陣師の佐藤雅樹が殺陣と武道修行から得た "気付き" を易しく解説します


by Masaki Sato

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垂直に伸びる背骨_21 呼吸法前編③

腹圧について(腹式呼吸)

前回に引き続き腹式呼吸における『腹圧』のご説明をば。

腹式呼吸でお腹を凹ませながら息を吐いていく時、それと同時に背中側も引き寄せられ、腹腔内には下の図のような『上下に引き延ばすような力=圧力』が生まれる。歌にもいう「お腹と背中がくっつくぞ!」という状態だ(平成生まれの人達は知ってるかなあ?/ 笑)

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ここでいう "理想の姿勢=腰のポジション" とは、やはり逆腹式呼吸と同じく『立つ腰』であって、一見して "圧力が上下に分散されている" のがお判りいただけると思う。

そして、これも逆腹式呼吸の時と同じく、それ以外の腰(反る腰・丸まる腰)では腹圧が不自然に偏っているという事も(下図参照)

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これら "偏った腹圧" を過度に掛けた場合、身体各部に様々な支障を来すのも逆腹式呼吸に準じる。


腹圧と自然な呼吸(腰)との関係

ここで、いくら『立つ腰』が良いといっても、それだけで運動は成立し得ないというのも逆腹式呼吸の時と同じで、例えば次にご紹介するように、『腰を丸めながら腹を膨らませて息を吸い、腰を立てながら腹を凹ませて息を吐く』というパターン(※)などがある(表演ではない、古伝の太極拳老師などは思いっきり背中を丸めながら息を吸う。そこには "相手の攻撃をかわす" という戦略的な意味も含まれるけれど)

(※)腰を丸めると自ずと下腹が膨らむ(内蔵が下降する)ので "腹に息を吸い込み易くなる" という関係

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動画にするとこんな感じ


また、今の例とは全く逆に、腹式呼吸で『息を吸うときに腰が反る』という方も大勢いらっしゃる事とは思う。

そういう方達は元々が "反り腰"(この連載では『反る腰』と定義)である場合が多いのだけれど、もう一歩踏み込んで考えてみると、脚が『外股』である場合が多いとも考えられるわけで、皆さんもなんとなくお気付きのように、脚の(膝の)『外股』・『内股』というのは腰の角度を規定する大きな要因となっているのだ。

ここで膝の向きと腰の角度を整理させてもらうと

・内股の人は腰が丸まり易い

・外股の人は腰が反り易い

という事になるわけで、なので、前述した "腹式呼吸で息を吸う時に腰が丸まり易いという人" は内股である場合が多いと考えられるわけだけれど(← 戦略的、意図的に行っている場合を除けば)、ここでの膝と腰の関係は決して一方通行なものではなく『膝の向きが腰の角度に影響を及ぼし、その腰の角度がさらに膝の向きを規定する』というような双方向の関係だろうと推察されるわけで、一見単純に見えるこの法則性も実は運動を観察する上でとても重要なヒントが隠されているものなのだ。

どういう事かというと、特に武道において『立ち方』というものはその流派の技術的な根幹を表している場合が多く、内股で立つ流派には内股の、外股で立つ流派には外股の術理的な理(ことわり※)や戦術的な利点というものがあるわけで、それらを素早く見抜く上で『膝の向きと腰の角度の関係』を熟知しておくというのはとても重要な事なのだ。

(※)中国武術では身体の内側を流れる運動エネルギーを勁(けい)と呼ぶが(ダンスのウェーブに似たもの)内股と外股でそのルートは異なる

まあね、腹式呼吸一つをとっても「こういう場合はこうで、この場合はこう」みたいな複雑な解説は読んでる人達にも分かりにくいであろうし書いてる本人も面倒臭くてかなわない(笑)俺自身が何か一つの流派の長で「呼吸の際の腰はこれ一つ!」と言えたらどんなに楽だろうとも思うけれど、俺がここで目指しているのは "より多くの方達に呼吸の深奥を味わっていただきたい" という事なので、必然的に説明が多岐に渡るのは致し方ない事だと思っている。

また、話が大きくなるけれど、『人の持つ多様性をそのまま丸ごと受け止める姿勢』こそがこれからの時代には求められるものだと信じているので♡


熟達した呼吸と腰

逆腹式呼吸の時にもお話した通り、腹式呼吸が熟練の域に足した場合、腰の動きはほとんど外側に現れなくなる。もうお腹だけがベッコンベッコン出たり入ったりするだけね(笑)

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余談だけれども、前々回の『呼吸のメカニズム』でも解説したように、腹が出たり引っ込んだりする事で内蔵の血液が強制的に循環されるので(強力なポンプ作用)、布団の中で腹式呼吸を行ってから眠りに着くと次の日の疲労回復に驚くほどの効果がある。もちろん、腹式呼吸によって副交感神経が優位になり脳がリラックス出来るという効果もあるけれど、ここで言っているのは、生々しい実態として "滞った血" がギュンギュン循環させられるというお話(笑)

そう、経験から言えるけれど、バテはまず内蔵からくるんだよね。なので、なかなかバテが治らない時などは、ちょっと荒技になるけれど、寝る前に先ず逆腹式呼吸をガンガンやって(といってもせいぜい四〜五回で良いけれど)特に "腸に鬱積した血液" を無理矢理押し出した後で、ゆったりとした腹式呼吸で精神をリラックスさせるというやり方もある(これも "長めで静かなの" を四〜五回で可)

バテ気味な体質の方には是非お試しいただきたい方法ではある。


腹式呼吸と背骨の伸長

さてさて、腹式呼吸の腹圧についてご理解いただいたところで、重大な発表が・・・

本連載が始まった当初からお伝えしてきたように、背骨の伸長を引き起こす力の源は『逆腹式呼吸から生じる腹圧』には相違無いのだけれど、実は、実は・・・

腹式呼吸でも背骨の伸長は起こるのですよっ!!


腹式呼吸における "背骨の伸長と呼吸筋の関係"


「ぬわにぃ〜〜、てめえ今まで嘘ついてたんかっ?!!」ってお怒りにならないように(汗)俺のように東洋的武術を修行する者は大抵の場合 逆腹式呼吸から入らされたものだし、そもそも本連載の内容は俺自身の上達過程を元に構成しているものなので必然的にそうなってしまったのだけれど、間違いなく腹式呼吸でも『背骨の伸長』は起こるのだ。

俺がそれに気付いたのは、逆腹式呼吸で背骨の伸長を身に付けた随分後、何気なく腹式呼吸をしてたら意図せず背骨が上下に伸びはじめたのでビックリした記憶があって(笑)なので、長年腹式呼吸を鍛錬されてきた方達の中で「私も背骨が上下に伸びるけれど、私のはこの連載でいう背骨の伸長ではないのね?」って思われるかもしれないけれど

あなたはあなたで正しいんですっ!

って事を言いたいわけ。

それこそが先にも述べた人間の多様性って事にも繋がるからね♡


というわけで、腹式呼吸における背骨の伸長のメカニズムを、あくまで俺の身体の中で感じている感覚ではあるけれど、ざっくりと説明させていただくと、前述したように腹式呼吸の腹圧は上下方向に向かっているので、その力がダイレクトに背骨周りの深層筋(多裂筋)を引き伸ばし、お腹と背中がぺったんこにくっ着くような深い腹式呼吸を行う際には、そのまま背骨が上下に引き伸ばされる

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腹圧に押し出されるように背骨が伸びていく


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お腹と背中がくっつくぞ(笑)


ただし、逆腹式呼吸で説明したような『背骨が、一個一個、下から順番に引き伸ばされて行く』という感覚を得るためには、やはり『仙骨(骨盤の中心の骨)』が柔らかく動いて、下の図のように『腸骨(骨盤の左右の骨)』から独立して回転する必要がある(これをここでは『骨盤分離』と呼ぶ)またこの場合、逆腹式呼吸の時のように "骨盤(腸骨)が左右に広がる" 必要はないので、人によってはこちらの方が『背骨の伸長』を身につけ易いのかもしれない

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仙骨が腸骨から独立して回転する


余談だけど、これまで様々な運動を体験し、また体験しないまでも色々な運動に興味を持って観察し続けて来た者として一言感想を言わせてもらうなら、同じように、『軸・センター・中心線』等、背骨を真っ直ぐにする事を要諦とする身体文化においても、こと『腹式呼吸』でそれ行うのは西洋の身体文化に多いような気がする。ダンス等の指導言語に「胸を引き上げるように」というものがあるけれど、それを意識すると必然的にお腹が凹み腹式呼吸になるので。

またその逆に東洋の身体文化においては『軸・センター・中心線』の他に『肚(はら)・丹田(たんでん)』という風に『下腹(=腹腔)』に意識を置く事をも要求されるけれど、この場合は自ずと『逆腹式呼吸』になり易い傾向があると思う。

もちろん「うちは違うぞ!」と仰る方達も大勢おられると思うし、"一つの運動種目の中に腹式と逆腹式とが混在する" 場合も多いので(太極拳がそうだし、発声なども明らかにそうであろう)今述べた "傾向" はあくまで俺個人の感想であるとご理解いただいて、運動を観察される際の参考程度にしていただければと思う。


腹圧がもたらす福音

ここまで、主に "腹圧の危険性" に重きをおいて説明してきたけれど、前回にも述べたとおり、腹圧は『人が生きていく上で最も根幹となる運動エネルギー』には違いないので、常に意識をしながら上手に活用していただければと思う。

また、"過度な腹圧が脳に悪影響を及ぼす" 事は周知のこととしても、適度な腹圧と背骨のコントロールから生まれる『背骨の伸長』という状態(運動)こそが『脳を健康に保つ極意』ではあると信じるので、これからも懇切丁寧にそこに至る『道』を解説させていただければと思う。

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背骨の伸長が脳を健康に保つ



さてさて、次回からはようやく腹式呼吸のやり方をご紹介していこうと思うよ。

ホント、いつも前置き長くてごめんね〜
あきらめないで付いて来てくださいね〜〜 ( ´ ▽ ` )


・・・続く

by genshu-juku | 2018-12-09 15:03 | 垂直に伸びる背骨(連載) | Comments(2)

垂直に伸びる背骨_20 呼吸法前編②

腹圧について(逆腹式呼吸)

前回、呼吸のメカニズムに関してお伝えしたので、今回はもう一歩踏み込んで『腹圧』の話をさせてもらおうと思う。

『腹圧』とは、読んで字の如く、『腹腔(内蔵が収まる空間)』の中の "圧力" の事を指しているわけで、日常における小便や大便の排泄、くしゃみや咳等で異物を体外に排出する作用、後は女性が赤ちゃんを分娩する際の力の源であって、生命維持活動には無くてはならないものであり、こと身体文化にも同様の事が言えて、例えば発声する時の "声の大きさ" や、スポーツにおける "体幹の強さ"、伝統的な武道・舞踊においてはそのまま "威力" や "キレ" に直結するものであって、"人" が生きて生活していく上で最も根幹となる "運動エネルギー" と言っても過言ではないと思う。


また、本連載『背骨の伸長』のメカニズムに於いては、逆腹式呼吸によって生じた強烈な腹圧が骨盤底筋群を引き伸ばし、その伸長する力が骨盤の分離(腸骨と仙骨)を促し、さらに伸びようとする力が行き場を求めて背骨の隙間(椎間板)を下から、一個一個、順に引き伸ばして行くという手順を踏むわけで、正に『腹圧』こそが本運動(背骨の伸長)の、起爆剤、原動力となっている事が判る。

下に "背骨の伸長と呼吸筋の関係" を動画で示したので、「腹腔の空洞になっている部分には強い圧力が掛かっている」と想像しながらご覧いただきたい。




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高い腹圧が "背骨の伸長" を引き起こす


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骨盤底筋群が引き伸ばされ、骨盤が広がる



腹圧と姿勢の関係

腹圧の大切さはご理解いただけたと思うので、次に「腹圧が高まるタイミングはいつか?」という話に移ると、あくまで俺独自の定義をさせていただくと

・息を吸って止めている時(止息)

・息を吐いている時

という事になるのだけれど、要するに、便秘で息んでいる時をご想像いただければ分かり易いと思う(笑)

んで、"息み" が強ければ強い程 目的とする "効果が高い" のは皆さんもご経験からお分かりいただけるとは思うけれど(正にそれがスポーツや武道における "強さ" や "威力" に繋がるわけだけれど)ここで思い出していただきたいのは、その息む "タイミング" や "姿勢" が悪いと、例えば頭に血が上り過ぎたり、はたまた肛門に無理な力が掛かり過ぎたりして、脳や肛門を壊しそうになり、「ヤベッ!危ねえっ!!」って事になるわけで(← "脳出血" や "痔" )別な例を挙げれば、"くしゃみ" が物凄い力を発揮するのは周知の事だとは思うけれど、タイミングと姿勢を間違えれば、高齢の女性などでは背骨を骨折してしまう程の事故に繋がるわけで、腹圧を上手にコントロールする為にはいかにタイミングと姿勢が大切かが解ってくる。

ここでいう "正しいタイミング" というのは、『危なくない正しい姿勢が完了した時』の事を指すので(若しくは、運動に於いて、予備動作から本動作に移行する時)ここからは『正しい姿勢』に集中して話を進めて行きたいと思う。

で、ここで提唱する正しい姿勢とは真っ先に『立つ腰』であって、"この姿勢で行う逆腹式呼吸こそが理想の逆腹式" であるとお伝えしておきたいのだ(下図参照)

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逆腹式の理想的な腹圧


理想的な逆腹式呼吸が決まる時、腹腔内では上下左右に均等に圧力が分散される。特に注目していただきたいのは腰椎の背中側(一般的にはこの辺りを "腰" と呼ぶ。本連載では "骨盤辺り" を腰と定義する)も膨らんでいるという事。

このような状態を、大正〜昭和と活躍した導術(心身開発法)の達人・肥田春充(ひだはるみち)『腰腹同量(ようふくどうりょう)』と呼び、身体と精神(脳活動)が最も力を発揮するための必須の在り方だと説いている。

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ここで思い出されるのは、俺が二十代の頃、俳優養成所で生まれて初めて受けた『発声』のレッスンで、先生から「腹だけではなく腰も膨らませるように」と指導されたのにも関わらず、当時の俺には全くその意味が理解できず、ひたすら腹筋を締めて目を白黒させていたという事だ。

身体的な理論などには目もくれず、「外側の筋肉だけつけていれば大丈夫!」っていうか、内側にも筋肉がある事すら知らなかったあの頃の俺が、 "腰の角度" や、ましてや "横隔膜" などに思いを馳せる事など到底不可能だったろうけど(笑)


さてさて、"均等な腹圧" が大切な事が判ったとして、それでは "均等ではない状態" はいかなるものかというと、下の画像にあるように、腰が丸まり過ぎたり、反り過ぎたりするする場合で(他にも色々な体勢があるだろうけれどここでは割愛する)一見して圧力が偏っているのがお判りいただけると思う。

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逆腹式の不均等な腹圧


脅かすわけではないけれど、このような状態で強すぎる腹圧を掛けてしまった場合(例えば "くしゃみ" や "急に重いものを持った時" 等 )偏った圧力が腹腔内の弱い部分に集中してしまい、痔や脱肛、女性の場合は膣から身体の外に臓器が出てしまう『骨盤臓器脱』などを引き起こす危険性があるので十分に注意していただきたい。

また脳圧が上がり過ぎる事も呼吸法の重大な問題であって、"トイレでの息み" が脳出血の原因の一つである事からもお分かりのように、不自然な腹圧の偏りは簡単に脳にも達してしまうので、腹圧のコントロールには慎重すぎるくらいに気を配っていただきたいと思う(※)

(※)いずれ詳しく解説させていただくつもりではあるが、東洋の身体文化にはそれぞれに『腹圧が脳に達するのを上手に回避するための首の動き』というものを有している。例えば昔のカンフー映画の中で「相手に突きを食らわす瞬間にわざとソッポを向く」という伝統的な振り付けがあったけれど(懐かしい〜)、それは『身体の内側で生み出した運動エネルギーを余すところなく拳に誘導する』という意図の他に『脳に向かって上昇する腹圧をその直前で回避する』という二つの極意を表現したものなのだ。


さてさて、腹圧の危険性とそれをコントロールするための腰のポジションについては判っていただけたとしても、運動やスポーツには多種多様な動き、"腰の構え" があるわけで、例えば野球のピッチング動作では大きく上体を仰け反らせた上で一気に前傾(丸める)させたり、体操の前宙やバック宙に至っては膝を抱え込んで完全に身体を丸くさせたりするわけで、なので、『立つ腰』が良いから何がなんでも『立つ腰』でやりなさい!と言ってるわけでは決してない事をご理解いただきたい。

また、ここでいう『立つ腰』の説明が適用されるのは、主に "技が決まった時、もしくは一番力を発揮する時に上半身が真っ直ぐになる運動" であって、その運動文化の口伝(教え)の中に 『軸』・『センター』・『中心線』・『頭の天辺から吊られる』 等、"身体を真っ直ぐに保つための意識" を喚起させる言葉が含まれているものであるという事も併せてご承知おきいただきたい。


腹圧と自然な呼吸(腰)との関係

前述した通り、"人の織りなす動き" には様々な局面が存在するわけであり、それは "軸・センター・中心線" 等を術理の根幹とする運動にも当てはまるわけで、いくら『立つ腰』が理想とは言っても、激しく動き回る武道や舞踏に於いて「立つ腰だけで完結させなさい!」と言われてはそりゃあ無理がある(笑)

一般的な例としては、逆腹式呼吸の場合、『腰を反りながら胸を膨らませて息を吸い、腰を立てながら腹を膨らませて息を吐く』というパターンが多く見受けられる(※) 例えば武道の "突き" において、準備動作で腰を反りながら息を吸い(尚且つ息を溜め)、腰を立てながら一気に拳を突き出す(と同時に息を吐く!)という一連の動作があるが、これなどは目的とする動作(この場合は突き)と呼吸が実に良くマッチされた状態だとは言えよう。

(※)腰を反れば必然的に胸も反り、ひいては胸郭(肋骨)をも広げやすくなるので "胸で息を吸い易くなる" という関係

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動画にするとこんな感じ


但し、このような状態も、あくまで多種多様な "呼吸と動作のバリエーション" の中の一つであって、これが全てではないということをご承知おきいただきたい。中には、上記の在り方とは全く逆のパターンで逆腹式呼吸を行う運動もあるかもしれないので。


熟達した呼吸と腰

ところで、ですな・・・

ここまでの話の流れをひっくり返すようで恐縮なんだけれど、呼吸法だけを取り上げれば、熟達するに従って腰の動きは外見からはほとんど分からなくなるようになってくるのですよ。そう、腰とか全然動かしてないように見えるのね。お腹と胸だけが大きく膨らんだり凹んだりしている感じ。

これはどういう事かというと、"腹腔内で呼吸筋群やら骨盤の関節(仙腸関節)やらが目一杯動いている" って状態なんだよね。なので『外側の筋肉をあまり動かす必要がないくらい内側の深層筋群や骨が使えている』って事になる。

表向きはシレッとして何の努力もしてなさそうにしてて水面下では必死こいて動いてるって感じ?(笑)

このような領域が何に役立つのかというと、武術で言えば "戦略的に優位" だからだよね。"相手に動きを読ませない" という意味において。で、どういうトレーニングをするのかというと、単純に『外側をなるべく動かさない様に意識する』だけ。そうすると、初めは外側につられて動きづらかった内側も、時間を経るに従って徐々に動かせる様になってくる。これは、太極拳を始めとする内家拳(内側を主とする武術の総称)の常套手段なんだけれども、やはり最初からそうするのではなくって、初心の内は内側も外側も偏りなく錬磨し、十分に動かせる様になってから徐々に移行するのが良しとされている。

「武術は志さなくとも更なる呼吸の高みを目指したい!」と望まれる方には、是非、挑戦されてみては?と思うけれど、その際には、適宜、外側の筋肉も一緒に動かしてあげて身体を硬くされないよう気を付けていただきたい。

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まあ、一般の方達にはこういう状態まで目指さなくても、しっかりと "内側と外側を動かした呼吸" を続けていれば『背骨の伸長』には十分辿り着けるので、敢えてここまでは要求しません。「そういう事もあるのだなあ」というくらいの認識を持たれるだけで結構ですので。



次回は引き続き『腹式呼吸における腹圧』の解説をいたしますのでお楽しみに〜 ( ´ ▽ ` )


・・・続く



追記
この原稿を書いている最中、たまたまテレビで『逆腹式呼吸を伴った筋トレ』なるものが紹介されているのを見かけた。「マスメディアで逆腹式呼吸が紹介されるなんて時代も変わったなあ」という感慨を持ちながらも、その即効性のみを前面に打ち出した、この連載でも口を酸っぱくして言ってきた "逆腹式呼吸の危険性" には全く触れない喧伝の在り方には疑問を持たざるを得なかった。あれをそのまま実行すれば、若く健康な人達には問題ないとしても、中高年の方や、若くても身体が丈夫でない人達の中には頭がクラクラしたり "原因不明の腹痛"(←実はインナーマッスル痛)に悩まされる方が出てくるであろうに・・

地味でも、誰にも見向きされなくても、自分が正しいと思った事は伝え続けていかなければと決意を新たにした次第ではある。

by genshu-juku | 2018-12-03 11:58 | 垂直に伸びる背骨(連載) | Comments(0)