殺陣師の佐藤雅樹が殺陣と武道修行から得た "気付き" を易しく解説します


by Masaki Sato

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カテゴリ:垂直に伸びる背骨(連載)( 25 )

垂直に伸びる背骨_25 呼吸法後編④

逆腹式呼吸の実践

さあ、いよいよ待ちに待った『逆腹式呼吸』の実践法だ。
先ずそのメカニズムを動画でご覧いただこう。


『逆腹式呼吸のメカニズム』




ここで改めて「逆腹式呼吸とは何か?」を振り返ってみると、上の動画をご覧になってお判りのように『息を吸う時に胸が膨らみ(腹は凹む)、息を吐く時に腹が膨らむ呼吸』という事になる。これが何を意味するのかというと、通常の腹式呼吸に比べ、より高い『腹圧』(この場合『内から外に向かって均等に張る力』)を発生させることが出来るという事で、それが身体を使った運動においては高度な『パフォーマンス』と強力な『威力』を、精神活動においてはどんな難事を前にしても動じない『不動心』を獲得できるという夢のような呼吸鍛錬法であって、古くから、武道や舞踊、その他 "修行" を旨とする各種身体文化において重宝されて来たものではある。

また、本連載『背骨の伸長』においては、逆腹式呼吸において生み出された強力な腹圧が骨盤内の深層筋群を押し広げ、その力が背骨を伝わって頭蓋骨まで到達するという・・外から見た動きとしては、背骨が上下に引き伸ばされる様な、頭が天井から釣り上げられる様な・・・歴史ある身体文化には必ずといって良いほど内在する指導言語の『中心線』や『センター』等と呼ばれるものがあるが、それらの、いわゆる『極意』・『奥義』を成立させる根幹中の根幹、例えるならエンジンのような働きをしているものであって、逆腹式呼吸を自家薬量中の物にする事こそが、武道・舞踊・スポーツ・音楽等々、身体文化の『上達の鍵』といっても過言ではないのだ。

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逆腹式が生み出す『背骨の伸長』


こんな素晴らしい呼吸法があるのなら、もっと広く一般に普及していても良さそうなものなのだが、現実はなかなかそうもいかず(三十年前に比べれば随分知られて来てはいるけれど)マニアックな、修行者、身体オタクたちによってのみ、水面下で細々と受け継がれて来たという事情があるわけで(←怒られるど)その最大の理由は何かと言うと、やっぱ強度が高い・・ぶっちゃけキツイってわけで(そして難しい!)、うっかりやり過ぎちゃって呼吸に関わる深層筋群(インナーマッスル)なんか痛めちゃった日には、夜も眠れない程の激痛に苛まれちゃったりもするわけで、なので、俺個人としては、その辺を歩いてるおばちゃんを捕まえて「健康に良いからやってみ?」とはとても言い出しづらく、かと言って身体の事にしか興味のない好事家(俺のことか?)たちにだけこの素晴らしいアイテムを独占させておくのも口惜しく、なんとか安全に、一般の方達にも享受していただけないものかと、無い知恵絞って、全財産をはたいて(←嘘)この逆腹式呼吸の普及に努めて来たという次第ではある(※)

というわけで、何年か越しの宿願でもあった『逆腹式呼吸・実践法』、パソコンに向かい過ぎて腰や首を痛めるほど頑張って動画や画像を作って来たので(笑)どうぞ最後までお読みくださいますように♡


(※)本当の所、道術の達人・肥田春充運動科学者・高岡英夫を初めとする大先達(だいせんだつ=大先輩)が残してくれた功績を、自分の言葉を通して後世に語り継ぐべく、鱓(ごまめ)の歯軋り的な努力を続けて来ただけ。


【一口アドバイス】
検索等で直接このページにお越し下さった方々には、ご面倒でも『呼吸法実践のガイダンス』を一読される事をお勧めする。ここに記載されている内容がよりスムーズにご理解いただけると思うので。


呼吸の要諦

改めて逆腹式呼吸を外観すれば下のGIF動画のようになる。

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息を吸う時に胸が膨らみ(腹は凹む)

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息を吐く時に腹が膨らむ


注意点(コツ)

・上体を十分にリラックスさせること

・特に腹筋には力を入れないこと

・息の吐き出し(腹を膨らませ始める)では、息は細く、丁寧に

・中盤〜終盤(腹が十分膨らんだ状態)、息は太く、一定に


特記

・『声』を専門にする人は、特に、喉を意識的にゆるめること


改めて解説させてもらうと、逆腹式呼吸における一番の難所というか、注意深く行わなければならない箇所は、自分的には『息の吐き始め』だと考えていて、初学者が通常の腹式呼吸の感覚で一気に息を吐き始めると、途端に肺の中の空気が抜け始め、それに合わせて腹圧も急激に下がるので、「腹を膨らまそうと思っているのにあれよあれよという間に腹が萎んで行くという状況」に陥るわけで、そうならないためには、『息の吐き始め』では腹圧を逃さないよう、細く、そろそろと吐き出していくのがよろしく、それでも腹圧が下がって(腹が凹んで)困るというのであれば、腹が膨らみ切るまではいっそのこと『息を止めていれば良い』という事になるわけで、俺流呼吸法では『呼吸の狭間』(←ここでは胸を膨らませて息を吸った直後)でも2秒ほど息を止める事を推奨しているので、それを加えるなら結構な時間(4秒くらい?)息を止めている勘定になるけれど、"呼吸筋の筋力トレーニング" と捉えるならそれもまた効果が高いと考えられるわけで、身体に無理のない程度で(息が苦しいと感じられない程度に)息を止めることは問題のない事と思える。

また、もう一つの難所は、終盤、『息を吐き切る辺り』であって、吐く息もほとんど無く、肺もいい加減しぼみたがっているというのに、それに抗うかのように腹を膨らませ続けるというのは、最早、『横隔膜の力技』といっても過言ではなく、かなりの筋力(←呼吸筋群の)と努力感が必要になるわけだけれど、それでも、それにつられて上半身を緊張させてしまっては、それに阻害されて横隔膜がそれ以上下に降りなくなってしまうので、決して得策とは言えず(※) 、『呼吸が苦しくなればなるほど上半身の力を抜かなければならない』というアンビバレンスをその身で体現しなければならない難しさがある。しかし、これに関しては『呼吸筋群の筋力と持久力』が問題なのだから、普通の筋力トレーニングと一緒で、最初は負荷を軽くして行う以外 法はなく、例えば「腹を膨らませる度合いを小さめにする」とか「息を吐く時間を短めにする(5秒を3秒とかに)」等で対処していただきたい。

(※)『外側の筋肉を緊張させると内側の深層筋群の活動が阻害され、外側を弛緩させると内側が使えるようになる』という関係がある。


【補足】
俳優や歌い手さん等、声を生業とされている方達には、特記したように、この呼吸法には多少身体的に苦しい局面が存在するので、その際、上半身、特に喉の筋肉を締めてしまわぬよう十分注意をしていただき、場合によってはハミング等の軽い発声を伴いながら鍛錬を実施していただきたいと思う(リラックスしてハミングができる程度の "呼吸の強度" で) 無造作に取り組んでしまっては『喉を締める癖』がついてしまいかねないので。


骨盤の操作について

前述した通り逆腹式呼吸は『高い腹圧を生み出す』ものだが、均等で、偏りのない腹圧を発生させるためには『息を吐いた時』に腰(骨盤)を立てるよう心がけていただきたい。
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その時の腰の使い方としては、息を吸った時に腰が反っているので『息を吐きながら腰(骨盤)を丸めて行く』という感覚だ(下のGIF画像参照)

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腰(骨盤)を丸めて行く過程で

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良きところで回転を止める


尚且つ、その状態のまま横隔膜をさらに下に降ろしていけば(腹を膨らませていけば)、見事、下の図の様な『腰腹同量』の完成と相成るわけだ。但し "横隔膜の降下" と "腰の回転" が同じタイミングで揃うのが理想ではあるが、初心の場合は意識をしっかり分けて、ある程度動作を区切って行っても構わない(※)

(※)分割法

・息を止めながら腰(骨盤)を丸める(腹筋には力を入れない)

・良きところで腰の回転を止める
 この時点で腹圧が逃げ場を求めて自然と下腹を膨らます(息は止めたまま)

・腰はそのままで、更に横隔膜を意識的に押し下げる(息は止めたまま)

・腰と横隔膜のポジションはそのままで息を吐く

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『腰腹同量』を上から見た図


また、十分な鍛錬を積み、『呼吸筋群と骨盤の連関構造』が構築されて来さえすれば、腰の回転はほとんど意識せずとも、しっかりと腹圧をかければ(この場合は『腹を膨らます事』)腰のポジションは自ずと正しい場所に収まるものなので、それを目標に、初心の内から腹圧を意識しながら練習に取り組んでいただきたい。

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この際の注意点は『腰を丸め過ぎない』という事。

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そうならないためには、次に挙げる "仰臥位(仰向けの姿勢)" で『腰椎を床に着ける感覚』を養っていただきたい。その感覚がそのまま『腰(軸)を立てる感覚』となって行くので。



仰臥位
(吸息時に腰が反るタイプ)


呼吸鍛錬の基本姿勢といっても良い『仰臥位』。

その理由は足腰に余分な力が要らないからで(※)、初心のうちはリラックスしやすい『仰臥位』で十分に『骨盤と呼吸筋群の操作の感覚 = 腰(軸)を立てる感覚』を掴んでいただき、その後は『座位』、そして『立位』へと段階を踏んで行っていただきたい。

(※)呼吸法の実践で最も大切なのは『全身、特に腰周りを十分にリラックスさせる事』なので。




"俺流逆腹式呼吸" の要点は『仰臥位・座位・立位』の全ての姿勢を通じて以下の通り

・吸う時は鼻から

・吐く時は 鼻か 口から
(勢いよく吐けば自ずと口から出て行きます)

・全身を、特に骨盤周りをリラックスさせて

・吸息(息を吸う)に三秒、呼息(息を吐く)に五秒かける

・息の吐き出しは細く、丁寧
 中盤からは太く、一定に(逆腹式様の腹圧をかけるコツ)

・呼吸の狭間(吸息と呼息、呼息と吸息の間)は二秒ほど息を止める
(息む必要はない。リラックスして自然な形で)


仰臥位での基本姿勢は両膝を骨盤の幅に開き、軽く立てる。

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両手のポジションは最初のうちは『腰の回転軸』を意識し易くするため、両手親指で「いいね!」を作って骨盤の側面に添えるものを推奨する(骨盤を水平に貫く軸

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腰の回転軸をいつでも意識できるようになったら、両手をお腹の上に軽く置いて腹圧を意識し易くするポジションを取っても構わない。

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以上の状態で、胸を膨らまし、腹を凹ませながら息を吸い込む(吸息)
その際、腰は自然と反る(床から離れる)

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息を吐きながら(呼息)腹を膨らませて行く。
同時に腰椎を床に着けるよう骨盤を回転させる。

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息を吐いた時に腰椎が床に近づく(腹は膨らむ)


この時の『骨盤や呼吸筋群を操作する感覚』が、真直ぐ立った時の『腰(軸)を立てる感覚』につながっていくので、じっくり、丁寧に練習を重ねていただきたい。


但し、お尻(仙骨)が床から浮き上がってしまうのは丸まり過ぎになるので要注意。

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座位
(吸息時に腰が反るタイプ)


仰臥位で培った『腰(軸)を立てる感覚』を "真っ直ぐ" に移行させていく段階が座位。脊柱を屹立させるため、背中、腰周りが緊張し易くはなるけれど、努めてリラックスさせる事を心掛けたい。注意点は頭の位置を前後にぶらさないという事(上下には僅かに動くが)鏡を見たり、他の人に確認してもらったりして、 "自分の内側で感じている感覚" と "身体の外側に現れる状態" を擦り合わせて行かれたし。





要点は仰臥位の時と同じく

・吸う時は鼻から

・吐く時は 鼻か 口から
(勢いよく吐けば自ずと口から出て行きます)

・全身を、特に骨盤周りをリラックスさせて

・吸息(息を吸う)に三秒、呼息(息を吐く)に五秒かける

・息の吐き出しは細く、丁寧
 中盤からは太く、一定に(逆腹式様の腹圧をかけるコツ)

・呼吸の狭間(吸息と呼息、呼息と吸息の間)は二秒ほど息を止める
(息む必要はない。リラックスして自然な形で)


座位の基本姿勢は、両膝を肩幅に楽に開き、椅子に浅めに腰掛け、意識して上半身をリラックスさせる。

最初の内は両手で「いいね!」を作り、『骨盤を水平に貫く軸』を意識する。

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上半身をブラさずに腰の回転を行えるようになったら、両手の平を腹に当てて腹圧を確認するのも良い。

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以上の状態で、胸を膨らまし、腹を凹ませながら息を吸い込む(吸息)
その際、腰は自然と反る。

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息を吐きながら腹を膨らませて行く(呼息)
同時に腰が真っ直ぐに立つよう骨盤を回転させる。

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息を吐いた時に腰が立つ(腹は膨らむ)


腰(骨盤)を回転させながら胸と頭の前後の位置を動かさないように意識すると回転だけが伝わるイメージ)軸を真っ直ぐに保つ事ができる(鏡等で確認する事を忘れずに)


この時、腰を丸め過ぎないよう注意するのは仰臥位の時に同じ。

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立位
(吸息時に腰が反るタイプ)

武道・舞踊の様に専門的に『立つ訓練』を経ていない方々にとって、この様に "立ちながら何かをする"(この場合は呼吸)という事は、既に『立つ事』そのものが大きな障壁となってくる。具体的にいうと、特に腰周りの緊張が解けないので、腰(骨盤)を回転させようとするとその回転に上半身がそのまま付いて行き、軸が大きくブレてしまうという事が挙げられる。そのような時は、一度(と言わず何度も)仰臥位、座位に立ち返り、『腰〜胸〜頭の関係』を確認していただきたい。また、以前ご紹介したダンスストレッチを日頃から行い、骨盤周辺の筋肉を柔らかく保つのも大切な事と思われる。




要点は前の二つに準じる

・吸う時は鼻から

・吐く時は 鼻か 口から
(勢いよく吐けば自ずと口から出て行きます)

・全身を、特に骨盤周りをリラックスさせて

・吸息(息を吸う)に三秒、呼息(息を吐く)に五秒かける

・息の吐き出しは細く、丁寧に
 中盤からは太く、一定に(逆腹式様の腹圧をかけるコツ)

・呼吸の狭間(吸息と呼息、呼息と吸息の間)は二秒ほど息を止める
(息む必要はない。リラックスして自然な形で)


立位の基本姿勢は、両足を肩幅に楽に開き、つま先をなるべく前方に向け(脚の筋肉が緊張してしまうなら、外向き、内向き等、自然な形で構わない)、膝を緩める(少し曲げる / ※)。意識して上半身をリラックスさせるのは座位に同じ。

(※)膝と骨盤内の深層筋群は相互関係にあり、膝を伸ばしてしまうと深層筋群も伸展してしまうため、コントロールがし難くなるから(十分に鍛錬を積んだ骨盤はこの限りではない)

両手で「いいね!」を作り、『骨盤を水平に貫く軸』を意識する。

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上半身をブラさずに腰の回転を行えるようになれたら、両手の平を腹に当てて腹圧を確認するのも可。

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以上の状態で、胸を膨らまし、腹を凹ませながら息を吸い込む(吸息)
その際、腰は自然と反る。

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息を吐きながら腹を膨らませて行く(呼息)
同時に腰が真っ直ぐに立つよう骨盤を回転させる。

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息を吐いた時に腰が立つ(腹は膨らむ)


腰(骨盤)を回転させながら胸と頭の前後の位置を動かさないように意識すると(←回転だけが伝わるイメージ)軸を真っ直ぐに保つ事ができる(鏡等で確認する事を忘れずに)

この時、腰を丸め過ぎないよう注意するのは前の二つと同じ。

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立位での最重要課題はいかに骨盤周辺をリラックスさせられるかどうかだ。そのためには呼吸法とは別に『立つ稽古』に取り組まれる事をお勧めする。そのやり方を簡単に説明させてもらうなら、肩幅に両足を開いた楽な姿勢で「これ以上力を抜いたら倒れてしまう」というレベルまで全身をリラックスさせるという事だが、それを、姿勢を崩さず(酔っ払いのポーズの様に頭や肩をダランと垂らすことなく)3〜5分はキープしていただきたい。理想的なリラックス状態に入ると、身体は、常に、しかも非常に繊細に『バランスを崩す〜回復させる』事を繰り返すもので、その状態に於いて、全身はわずかに揺らぐ事となる( "立っち" したばかりの赤ん坊の様に)

また、繰り返しになるけれど、『腰(軸)を立てるコツ』とは、一にも二にも『腹圧をきちんと掛ける』という事に尽きるので(もちろん これまで学習してきた『感覚』も大切だけれど)、立つ事と腰を回転させる事に慣れてきたら、より一層『腹を膨らませる』事に専念していただきたい(←逆腹式の場合)そうすれば、いずれは『腹圧を掛けただけで腰が理想のポジションに収まる』ようになるものだから。


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今後の展開

今回、『逆腹式呼吸の実践法』を紹介出来たことで、連載開始からの約5年越しの想いがようやく果たせたわけで、もちろんこの連載もこれで終わりではなく、これからいよいよ佳境へと向かうわけだけれど、ここで一度、この連載『背骨の伸長』をお休みさせてもらい、新たな連載を始めたいと思っている。新しい連載は、その名も『氣と意識のトレーニング』と銘打ち、読んで字の如く東洋哲学の根幹とも言える『氣』と、それをコントロールするための『意識=イメージ』のトレーニング法をご紹介するものだが、では何故、今の連載を休止してまでそれに取り組まなければならないのかというと、例えば『下腹の中にボールが在るかのようなイメージ』(丹田とも言うが)を強く意識し続けていけば、自然と、副作用なしに、普通の人達にはなかなか意識する事も、ましてや動かす事さえも出来ない腹腔内の深層筋群(呼吸筋)をコントロール出来るようになるという利点があるわけで、まあ、『氣』の存在は未だ科学的に証明されてはおらず、故に懐疑的な方の方が多いという現状を十分に理解しつつも、この『イメージ(『意念』ともいう)トレーニング』の効用を放って置く手もないだろうと思い、見切り発車ではあるが、その基本理念だけでも広く世に問うて行く所存ではある。

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『丹田』のイメージ


もちろん、これまで心血を注いで作成して来た自作のCG動画たちも、皆さんに身体内部に深く潜む深層筋群を理解していだだくには十分過ぎる程の効果を発揮しているという自負は持ち合わせてはいるが、自分自身が『東洋的イメージトレーニング』の威力を身に染みて知っているだけに、ここで出し惜しみをしては「お宝を一人占めする昔話の意地悪じいさん」の誹り(そしり)は免れないという自責の念にかられ(笑)、「もういい加減めんどくさいブログから卒業したいよ〜、遊びたいよ〜、のんびりしたいよ〜、CGアニメ作りたいよ〜〜(泣)」という己の本心には蓋をし、これからも身体文化に関する情報発信に努めていく覚悟ではある。

でもまあ、この連載に限っても、一区切りである『逆腹式呼吸』に辿り着くのに5年もかかっていて、しかもまだ完結もしていないというのに、これからまた新しい連載を始めるというんだから、全てが完結するのに一体何年かかるんだろう?と、茫漠たる旅路を前に立ち尽くしてしまう。しかも、さらにその後の構想まで既に思い付いてしまっているというんだから、自分で自分の首を締めるとは正にこの事だ(泣)まあ、好きでやってるんだから仕方ないけどね〜♡


というわけで、まだまだ、まだまだ続きますんで、これからも末長く、ご声援、ご愛読の程よろしくお願いしま〜す!!


・・・あえて、続く(泣)

by genshu-juku | 2019-05-25 16:02 | 垂直に伸びる背骨(連載) | Comments(1)

垂直に伸びる背骨_24 呼吸法後編③

腹式呼吸その2

前回に引き続き、今回は『息を吸う時に腰が反る』というタイプの人向け。

このタイプには普段から『腰が反っている』方が多いとは思うけれど、もちろん、『腰が丸まっている』方達に試していただいても全く問題はなく、かえって骨盤周りの柔軟性が増して上達が早まると思われるが、如何せん、真逆の腰の使い方をするものだから頭がこんがらがる事は必至で(笑)、なので、よくよく頭を整理しながら、あまり同時には鍛錬せず、少しずつ交互に取り組んでいただければと思う(作ってる本人ですら、書いててわけが分かんなくなっちゃったりするので / 泣)

(※)『息を吸う時に腰が丸まる』タイプはこちら



『吸息時に腰が反るタイプ』
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このタイプの方々には『息を吐いた時』に腰(骨盤)を立てていただきたい

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その際の腰の使い方としては、息を吸った時に腰が反っているので『息を吐きながら腰(骨盤)を丸めて行く』という感覚だ。ただし、最後まで腰を丸めるのではなく、途中、「これで真っ直ぐかな?」というところで回転を止め、腹を凹ます事に専念していただきたい(下のGIF画像参照)

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腰(骨盤)を丸めて行く過程で


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良きところで回転を止める


その際にはできる限り腹を凹ませて腹圧を十分にかけていただきたい(この場合は『上下に分散する腹圧』)

横隔膜がまだ自分で意識出来ていない段階でも、外見でそれが(横隔膜が)使えているかいないかは判断できるもので、すなわち『姿勢が真っ直ぐに立っている事』と『腹がペタンコに凹んでいる事』がそれだ。この状態でこそ、横隔膜は最大限に上に引き伸ばされているものだから。

また、十分な鍛錬を積み、『呼吸筋群と骨盤の連関構造』が構築されて来さえすれば、腰の回転はほとんど意識せずとも、しっかりと腹圧をかければ(この場合は『腹を凹ます事』)腰のポジションは自ずと正しい場所に収まるものなので、それを目標に、初心の内から腹圧を意識しながら練習に取り組んでいただきたい。

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このタイプの注意点も、前回の『吸息時に腰が丸まるタイプ』と同じく、腰を丸め過ぎないという事(この場合は息を吐く時)


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そうならないためには、次に挙げる "仰臥位(仰向けの姿勢)" で『腰椎を床に着ける感覚』を養っていただきたい。その感覚がそのまま『腰(軸)を立てる感覚』となって行くので。



仰臥位
(吸息時に腰が反るタイプ)


呼吸鍛錬の基本姿勢といっても良い『仰臥位』

その理由は足腰に余分な力が要らないからで(※)、初心のうちはリラックスしやすい『仰臥位』で十分に『骨盤と呼吸筋群の操作の感覚 = 腰(軸)を立てる感覚』を掴んでいただき、その後は『座位』、そして『立位』へと段階を踏んで行っていただきたい。

(※)呼吸法の実践で最も大切なのは『全身、特に腰周りを十分にリラックスさせる事』なので。



俺流呼吸法の要点は『仰臥位・座位・立位』の全ての姿勢を通じて以下の通り

・吸う時は鼻から

・吐く時は 鼻か 口から
(勢いよく吐けば自ずと口から出て行きます)

・全身を、特に骨盤周りをリラックスさせて

・吸息(息を吸う)に三秒、呼息(息を吐く)に五秒かける

・呼吸の狭間(吸息と呼息、呼息と吸息の間)は二秒ほど息を止める
(息を詰める必要はない。リラックスして自然な形で)


仰臥位での基本姿勢は両膝を骨盤の幅に開き、軽く立てる。

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両手のポジションは最初のうちは『腰の回転軸』を意識し易くするため、両手親指で「いいね!」を作って骨盤の側面に添えるものを推奨する(骨盤を水平に貫く軸

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腰の回転軸をいつでも意識できるようになったら、両手をお腹の上に軽く置いて腹圧を意識し易くするポジションを取っても構わない。

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以上の状態で腹を膨らませながら息を吸い込む(吸息)
その際、腰は自然と反る(床から離れる)

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息を吐きながら(呼息)腰椎を床に着けるよう骨盤を回転させる。

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息を吐いた時に腰椎が床に近づく(腹は凹む)


この時の『骨盤や呼吸筋群を操作する感覚』が、真直ぐ立った時の『腰(軸)を立てる感覚』につながっていくので、じっくり、丁寧に練習を重ねていただきたい。


但し、お尻(仙骨)が床から浮き上がってしまうのは丸まり過ぎになるので要注意。

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座位
(吸息時に腰が反るタイプ)


仰臥位で培った『腰(軸)を立てる感覚』を "真っ直ぐ" に移行させていく段階が座位。脊柱を屹立させるため、背中、腰周りが緊張し易くはなるけれど、努めてリラックスさせる事を心掛けたい。注意点は頭の位置を前後にぶらさないという事(上下には僅かに動くが)鏡を見たり、他の人に確認してもらったりして、 "自分の内側で感じている感覚" と "身体の外側に現れる状態" を擦り合わせて行かれたし。




要点は仰臥位の時と同じく

・吸う時は鼻から

・吐く時は 鼻か 口から
(勢いよく吐けば自ずと口から出て行きます)

・全身を、特に骨盤周りをリラックスさせて

・吸息(息を吸う)に三秒、呼息(息を吐く)に五秒かける

・呼吸の狭間(吸息と呼息、呼息と吸息の間)は二秒ほど息を止める
(息を詰める必要はない。リラックスして自然な形で)


座位の基本姿勢は、両膝を肩幅に楽に開き、椅子に浅めに腰掛け、意識して上半身をリラックスさせる。

最初の内は両手で「いいね!」を作り、『骨盤を水平に貫く軸』を意識する。

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上半身をブラさずに腰の回転を行えるようになったら、両手の平を腹に当てて腹圧を確認するのも良い。

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以上の状態で腹を膨らませながら息を吸い込む(吸息)
その際、腰は自然と反る。

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息を吐きながら(呼息)腰が真っ直ぐに立つよう骨盤を回転させる。

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息を吐いた時に腰が立つ(腹は凹む)


腰(骨盤)を回転させながら胸と頭の前後の位置を動かさないように意識すると回転だけが伝わるイメージ)軸を真っ直ぐに保つ事ができる(鏡等で確認する事を忘れずに)


この時、腰を丸め過ぎないよう注意するのは仰臥位の時に同じ。

f0074992_14270879.png



立位
(吸息時に腰が反るタイプ)

武道・舞踊の様に専門的に『立つ訓練』を経ていない方々にとって、この様に "立ちながら何かをする"(この場合は呼吸)という事は、既に『立つ事』そのものが大きな障壁となってくる。具体的にいうと、特に腰周りの緊張が解けないので、腰(骨盤)を回転させようとするとその回転に上半身がそのまま付いて行き、軸が大きくブレてしまうという事が挙げられる。そのような時は、一度(と言わず何度も)仰臥位、座位に立ち返り、『腰〜胸〜頭の関係』を確認していただきたい。また、以前ご紹介したダンスストレッチを日頃から行い、骨盤周辺の筋肉を柔らかく保つのも大切な事と思われる。




要点は前の二つに準じる

・吸う時は鼻から

・吐く時は 鼻か 口から
(勢いよく吐けば自ずと口から出て行きます)

・全身を、特に骨盤周りをリラックスさせて

・吸息(息を吸う)に三秒、呼息(息を吐く)に五秒かける

・呼吸の狭間(吸息と呼息、呼息と吸息の間)は二秒ほど息を止める
(息を詰める必要はない。リラックスして自然な形で)


立位の基本姿勢は、両足を肩幅に楽に開き、つま先をなるべく前方に向け(脚の筋肉が緊張してしまうなら、外向き、内向き等、自然な形で構わない)、膝を緩める(少し曲げる / ※)。意識して上半身をリラックスさせるのは座位に同じ。

(※)膝と骨盤内の深層筋群は相互関係にあり、膝を伸ばしてしまうと深層筋群も伸展してしまうため、コントロールがし難くなるから(十分に鍛錬を積んだ骨盤はこの限りではない)

両手で「いいね!」を作り、『骨盤を水平に貫く軸』を意識する。

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上半身をブラさずに腰の回転を行えるようになれたら、両手の平を腹に当てて腹圧を確認するのも可。

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以上の状態で腹を膨らませながら息を吸い込む(吸息)
その際、腰は自然と反る。

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息を吐きながら(呼息)腰が真っ直ぐに立つよう骨盤を回転させる。

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息を吐いた時に腰が立つ(腹は凹む)


腰(骨盤)を回転させながら胸と頭の前後の位置を動かさないように意識すると(←回転だけが伝わるイメージ)軸を真っ直ぐに保つ事ができる(鏡等で確認する事を忘れずに)

この時、腰を丸め過ぎないよう注意するのは前の二つと同じ。

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立位での最重要課題はいかに骨盤周辺をリラックスさせられるかどうかだ。そのためには呼吸法とは別に『立つ稽古』に取り組まれる事をお勧めする。そのやり方を簡単に説明させてもらうなら、肩幅に両足を開いた楽な姿勢で「これ以上力を抜いたら倒れてしまう」というレベルまで全身をリラックスさせるという事だが、それを、姿勢を崩さず(酔っ払いのポーズの様に頭や肩をダランと垂らすことなく)3〜5分はキープしていただきたい。理想的なリラックス状態に入ると、身体は、常に、しかも非常に繊細に『バランスを崩す〜回復させる』事を繰り返すもので、その状態に於いて、全身はわずかに揺らぐ事となる( "立っち" したばかりの赤ん坊の様に)

また、繰り返しになるけれど、『腰(軸)を立てるコツ』とは、一にも二にも『腹圧をきちんと掛ける』という事に尽きるので(もちろん これまで学習してきた『感覚』も大切だけれど)、立つ事と腰を回転させる事に慣れてきたら、より一層『腹を凹ませる』事に専念していただきたい(前回で言えば『腹を膨らます』事)そうすれば、いずれは『腹圧を掛けただけで腰が理想のポジションに収まる』ようになるものだから。



というわけで、いよいよ次回は『逆腹式呼吸』の実践法のご紹介だ。

いや〜長かったな〜(遠い目)何しろ、この連載を始めた当初の目標は『逆腹式呼吸』のやり方を紹介する事だったんだから。ようやくそこまで辿り着いたって感じ♡

ただ当初の予定とちょっと違うのは、順番として『腹式呼吸の実践 → 更に内側を使えるようになるためのストレッチ → 逆腹式呼吸の実践』のつもりだったのが(前にもそう書いたよね?)、『更に内側を使えるようになるためのストレッチ』を飛ばして『腹式呼吸の実践逆腹式呼吸の実践』としている事です。何でかっていうと、『内側を使えるようになるためのストレッチは逆腹式呼吸を併用すれば倍の効果が期待できる』から! 俺自身、毎日のストレッチの中で、ふと自分の呼吸を観察してみたら普通に逆腹式で腹圧を掛けてたので、「何だ!それだったらみんなにもそのやり方を教えてあげれば良いんじゃんっ!」って気付いたわけ(笑)

また、これまでは「逆腹式呼吸は強度が高いため危険を伴う」と書いてきたけれど、そして今もその考えに変わりはないけれど、腹式呼吸をきちんと練習していただけるという前提で、尚且つ、「ここで紹介する方法以外の逆腹式呼吸を行わない」という条件付きであれば(例えば急激な "息み" を伴うもの)、初心の方達にも逆腹式呼吸のトレーニングを始めていただいて構わないと思っている。もちろん、やり過ぎればどの呼吸法でも危険なのは一緒なので、疲労が溜まって来たと感じる時は(具体的には"お腹が痛重く感じられる" 時など)一旦、呼吸法そのもののトレーニングをお休みして、すっかり回復してから再開するようにしていただきたい。


というわけで、次回の『逆腹式呼吸の実践法』こそは、本連載の事実上のクライマックスですぞ!

どうぞお見逃しなく!!


・・・続く



by genshu-juku | 2019-05-20 11:40 | 垂直に伸びる背骨(連載) | Comments(0)

垂直に伸びる背骨_23 呼吸法後編②

腹式呼吸その1

それではドシドシ進めて行きたいと思う。
先ずは『息を吸う時(吸息)に腰が丸まる』というタイプの人向けのレッスンから。

(※)『息を吸う時に腰が反る』タイプはこちら



『吸息時に腰が丸まるタイプ』
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このタイプの方達には息を吸い切った時』に腰を立てていただきたい

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そうすると、丁度、腹と腰の両方が膨らむ『腰腹同量』の状態が生まれるはずなので。

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そして吐く時は出来るだけ腹を凹ますつもりで最後まで息を吐き切っていただきたいのだが、その際は自然と腰が反って構わない。

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なので、このタイプの注意点は、息を吸う時に腰を丸め過ぎないという事

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要するに、『息を吸う途中、丁度、背骨が真直ぐになった辺りで腰を丸めるのを止める』という事だ(下のGIF画像参照)

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こうなっていく過程で

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ここで腰の回転を止める!!


尚且つ、その状態のまま横隔膜をさらに下に降ろしていけば(腹を膨らませていけば)、見事『腰腹同量』の完成と相成るわけだ。但し "横隔膜の降下" と "腰の回転" が同じタイミングで揃うのが理想ではあるが、初心の場合は意識をしっかり分けて、ある程度順番に行っても構わない(※)

(※)
「息を吸いながら腰(骨盤)を丸める」→「腰の回転を止める」→「腰はそのままで更にもう一息吸い込みながら腹を膨らませる」
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お腹を目一杯膨らまそう!!


しかし、呼吸法を始めたばかりの人達にとっては「どのタイミングが真直ぐな状態」なのかを判断するのは少し難しい所だとは思うので、次にご紹介する仰臥位(仰向け)の状態で『腰椎を床に着ける感覚』を身につけていただきたい。その感覚が即ち『腰(軸)を立てる感覚』に等しいので(実際は寝てるけど / 笑)



仰臥位
(吸息時に腰が丸まるタイプ)


仰臥位での鍛錬は呼吸法の基本といっても良い。その理由は足腰に余計な力がかからないからで、呼吸法の実践で最も大切なのは『全身、特に腰周りを十分にリラックスさせる事』なのだが、武道、舞踊などで専門的に『立つ訓練』をしていない人達にとってはそれが上達を阻む一番のネックになるわけで、そういった方々には、最初はリラックスし易い『仰臥位』で十分に『骨盤と呼吸筋群の操作の感覚 = 腰(軸)を立てる感覚』を掴んでいただき、その後は『座位』、そうして『立位』へと段階を踏んでいただくのが最良だと思われる。

というわけで、先ずは仰臥位から。




俺流呼吸法の要点は『仰臥位・座位・立位』の全ての姿勢を通じて以下の通り

・吸う時は鼻から

・吐く時は 鼻か 口から
(勢いよく吐けば自ずと口から出て行きます)

・全身を、特に骨盤周りをリラックスさせて

・吸息(息を吸う)に三秒、呼息(息を吐く)に五秒かける

・呼吸の狭間(吸息と呼息、呼息と吸息の間)は二秒ほど息を止める
(息を詰める必要はない。リラックスして自然な形で)


仰臥位での基本姿勢は両膝を腰(骨盤)の幅に開き、軽く立てる。

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両手のポジションは最初のうちは『腰の回転軸』を意識し易くするため、前述した両手親指で「いいね!」を作って骨盤の側面に添えるものを推奨する(骨盤を水平に貫く軸

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腰の回転軸をいつでも意識できるようになったら、両手をお腹の上に軽く置いて腹圧を意識し易くするポジションを取っても構わない。

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以上の状態で腹を膨らませながら息を吸い込む(吸息)

その際、腰椎の辺りを床に着けるよう骨盤を回転させる(腰が丸まる方向に)

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息を吸った時に腰椎が床に近づく(腹は膨らむ)


この時の『骨盤や呼吸筋群を操作する感覚』が、真直ぐ立った時の『腰(軸)を立てる感覚』につながっていくのでしっかりと丁寧に身体と脳に刻み込んで行こう。


但し、お尻(仙骨)が床から浮き上がってしまうのは丸まり過ぎになるので要注意。

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座位
(吸息時に腰が丸まるタイプ)


仰臥位で培った『腰(軸)を立てる感覚』をいよいよ垂直で試してみるのが座位。途端に色々なところが緊張してくると思うけれど、柔らかく、丁寧に、根気よく克服していっていただきたい。注意する点は頭の位置が前後にブレないという事(上下には僅かに動くけれど)鏡を見たり、他の人に確認してもらったりして、少しずつ "自分の内側で感じている感覚" と "身体の外側に現れる状態" を擦り合わせて行こう。




要点は仰臥位の時と同じく

・吸う時は鼻から

・吐く時は 鼻か 口から
(勢いよく吐けば自ずと口から出て行きます)

・全身を、特に骨盤周りをリラックスさせて

・吸息(息を吸う)に三秒、呼息(息を吐く)に五秒かける

・呼吸の狭間(吸息と呼息、呼息と吸息の間)は二秒ほど息を止める
(息を詰める必要はない。リラックスして自然な形で)


座位の基本姿勢は、両膝を肩幅に楽に開き、椅子に浅めに腰掛け、意識して上半身をリラックスさせる。

最初は両手で「いいね!」を作り、『骨盤を水平に貫く軸』を意識するのが良いだろう。

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上半身をブラさずに腰の回転を行えるようになったら、両手の平を腹に当てて腹圧を確認するのも良い。

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以上の状態で腹を膨らませながら息を吸い込む(吸息)

その際、背骨が真っ直ぐになるように骨盤を回転させる(腰が丸まる方向に)

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息を吸った時に腰が立つ(腹は膨らむ)


腰を回転させながら胸と頭の前後の位置を動かさないように意識すると回転だけが伝わるイメージ)軸を真っ直ぐに保つ事ができる(鏡等で確認する事を忘れずに)

この時、腰を丸め過ぎないよう注意するのは仰臥位の時に同じ。

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立位
(吸息時に腰が丸まるタイプ)


前述した通り、普段、立つ事を意識していない方達にとっては、この様に "立ちながら何かをする"(この場合は呼吸)という場合において、既に『立つ事』そのものが障壁になってくる。具体的にいうと、特に腰周りの緊張が解けないので、腰(骨盤)を回転させようとするとその回転に上半身がそのまま付いて行き、軸が大きくブレてしまうという事が挙げられる。そのような時は、一度(と言わず何度も)仰臥位、座位に立ち返って『腰〜胸〜頭の関係』を確認していただきたい。また、以前ご紹介したダンスストレッチを日頃から行い、骨盤周辺の筋肉を柔らかく保つのも大切な事だろう。




要点は前の二つに準じる

・吸う時は鼻から

・吐く時は 鼻か 口から
(勢いよく吐けば自ずと口から出て行きます)

・全身を、特に骨盤周りをリラックスさせて

・吸息(息を吸う)に三秒、呼息(息を吐く)に五秒かける

・呼吸の狭間(吸息と呼息、呼息と吸息の間)は二秒ほど息を止める
(息を詰める必要はない。リラックスして自然な形で)


立位の基本姿勢は、両足を肩幅に楽に開き、つま先をなるべく前方に向け(脚の筋肉が緊張してしまうなら、外向き、内向き等、自然な形で構わない)、膝を緩める(少し曲げる / ※)。意識して上半身をリラックスさせるのは座位に同じ。

(※)膝と骨盤内の深層筋群は相互関係にあり、膝を伸ばしてしまうと深層筋群も伸展してしまうため、コントロールがし難くなるから(十分に鍛錬を積んだ骨盤はこの限りではない)

両手で「いいね!」を作り、『骨盤を水平に貫く軸』を意識する。

f0074992_16494697.png

上半身をブラさずに腰の回転を行えるようになれたら、両手の平を腹に当てて腹圧を確認するのも可。

f0074992_16495154.png

以上の状態で腹を膨らませながら息を吸い込む(吸息)

その際、背骨が真っ直ぐになるように骨盤を回転させる(腰が丸まる方向に)

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息を吸った時に腰が立つ(腹は膨らむ)


腰を回転させながら胸と頭の前後の位置を動かさないように意識すると(←回転だけが伝わるイメージ)軸を真っ直ぐに保つ事ができる(鏡等で確認する事を忘れずに)

この時、腰を丸め過ぎないよう注意するのは前の二つと同じ。

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くどいようだが、立位での最重要課題はいかに骨盤周辺をリラックスさせられるかどうかだ。そのためには呼吸法とは別に『立つ稽古』に取り組まれる事をお勧めする。いずれ別の機会にご紹介するつもりだが、そのやり方をザックリ説明させてもらうなら、肩幅に両足を開いた楽な姿勢で「これ以上力を抜いたら倒れてしまう」というレベルまで全身をリラックスさせるというものだ。誤解して欲しくないのは、よく一般の方々に「立ったままリラックスしてください」と言うと、大抵の人は頭と肩をわざと落として(ダランとさせて)酔っ払いの様な姿勢を取るものだが、もちろんそれも必要な過程ではあるのだけれど、立位での真のリラックスとは『綺麗な立ち姿のまま最大限の脱力が出来ている』という事で、極限まで脱力が出来た者は、僅かに、微妙にゆらゆらしているもので(笑)酔っ払いの姿勢とは一線を画すレベルのものなのだ。一応、そのメカニズムを説明させていただくと、そのような極限の脱力状態で姿勢維持を担うものは、体幹ではご存知呼吸筋群や大腰筋等の、背骨では多裂筋と呼ばれる微細な筋肉群の、また脚や腕では外側の太い筋肉ではなく骨を取り巻く靭帯等の、全身の深層筋群(インナーマッスル)達であって、この様な状態に居る者は、その者の主観として「骨だけで立っている」と感じるものなのだ。

この様な状態は一朝一夕で成るものでは もちろんないけれど、これを目標に日々努力をしていただければと願う。その努力は決して無駄にはならず、普通の、何も意識していない人達には もしかしたら辿り着けさえしないレベルに、時間はかかるかもしれないけれど必ず到達できるはずなので。


それでは、次回は『腹に息を吸う時に腰が反る』タイプの人向けの呼吸法をご紹介しよう。

どうぞお楽しみに!


・・・続く


by genshu-juku | 2019-05-08 17:53 | 垂直に伸びる背骨(連載) | Comments(2)

垂直に伸びる背骨_22 呼吸法後編①

呼吸法実践へのガイダンス

さて、いよいよ呼吸法の実践に入るとしよう。
次回から二回に分けて腹式呼吸の実践法を、その後に逆腹式呼吸の実践法をご紹介したいと思う。

呼吸法といえば既に世の中にはいくつものそれが出回っているわけで、ここで改めて "俺流の呼吸法" を提示させてもらう理由は 一にも二にもこの連載のテーマ『背骨の伸長』を手に入れてもらいたいが故なのだが、それだけではなく、呼吸に関わる全ての身体運動を行う方々、例えば発声法や武術、舞踊、気功法に至るまでの幅広い分野で鍛錬をされる皆さんへの上達のヒントになってもらえればという願いもある。

先ずは例として下の動画をご覧いただきたいのだが、これからご紹介する呼吸法の全ては『腹圧が一番かかる状態で背骨を真っ直ぐに伸ばす』事が基本となっている(動画では腹に息を吸い切った時)


息を吸う時に背骨が真っ直ぐになっている(例)

この様な在り方を成立させるためには、これまでも口を酸っぱくして言ってきた『骨盤を垂直方向にわずかに回転させ、その回転を胸と頭に伝達する』という身体の使い方が必要になるわけで(詳細は 過去ログ を参照されたし)

なので、ここで言う "俺流呼吸法" を一言で要約するなら

"骨盤を回転させながら呼吸法を行う"

という事になるだろう。

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軸が真直ぐに伸びる『立つ腰』


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『丸まる腰』から『立つ腰』への回転


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『反る腰』から『立つ腰』への回転


また、この様な状態を別の言い方で表すなら

"軸を立てながら呼吸法を行う"

とも言えるのだけれど、何故それほどまでに『軸』にこだわるのかといえば『均等な腹圧をかけたいが故』であって、それが呼吸に関わる深層筋群(呼吸筋)を余すところなく使える条件だと感ずるわけで、それら呼吸筋が十全たる働きをした時にこそ『背骨の伸長』を初めとする『身体に本来備わっている真(芯)の力』が発揮されると信じるからなのだ。

この事をヨガの "ネコのポーズ" との比較で考察してみると分かりやすいと思う。ネコのポーズの様に "背骨を丸めたり反ったりしながら行う呼吸" は(その他の呼吸法にも多く見受けられる事ではあるけれど)、自ずと呼吸筋全てを柔軟にし、活性化してくれるので、呼吸を深くする事、引いては健康に寄与するという点では非常に効果的な手段ではあると思う。


背骨を丸めながら息を吸い、反りながら息を吐く

それでは、"腹圧をかける時に軸を立てる" 俺流呼吸法との違いは何かというと、端的に言って『呼吸運動において横隔膜が関与する割合』だと筆者は感じている。

ネコのポーズの様に "背骨を丸めたり反ったりしながら行う呼吸" では呼吸筋全体は満遍なく動いてはいるけれど、横隔膜に焦点を当てるのなら、さほど動いてはいない様に感じるからだ。少なくとも彼(横隔膜)のポテンシャルの100パーセントは発揮されていないはずだ。一方、"軸を立てる呼吸" において、横隔膜は正しく主役である。もはや彼なくしてこれらの(軸を立てる)呼吸は成り立たないと言っても過言ではないだろう。筆者の体感を述べるのを許していただくなら、慣れてくれば特に腰の角度など気にしなくとも、横隔膜を下げたり引き上げたりしさえすれば、腰の角度は自ずと正しいポジションに収まり、腹圧も均等にかかるものなのだ。その意味では横隔膜は『呼吸運動のスイッチ』といっても過言ではないだろう。

また外側(アウターマッスル)と内側(インナーマッスル)という括りでいうなら、 "背骨を丸めたり反ったりしながら行う呼吸" では、どちらかというと外側の腹筋や背筋等の運動が主導であり(※)、"軸を立てる呼吸" ではインナーマッスルの呼吸筋群がメインとなってそれ(呼吸)を成り立たせているともいえるだろう。

(※)あくまで割合として、ね。もちろんそれにつられて深層筋も動いているよ。

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上下に大きく動く横隔膜(赤)

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横隔膜に連動して呼吸筋群が動く


『外側主導』『内側主導』の違いを理解してもらうには、ちょっとした上達論を例に出すと解りやすいだろう。

まだ呼吸鍛錬の浅い若手俳優達の中には、大きな声を出す際に上体を屈曲させて苦しそうに声を出す者達がいる。ところが同じ劇団のベテラン俳優達は、押し並べてスッとした綺麗な立ち姿のまま、件の若手達の何倍もの声量を軽々と出したりする。そう、身体を丸めて発声する若手達は外側の筋肉(アウターマッスル)に頼り、軸の効いた姿勢で発声するベテラン達は内側の筋肉(インナーマッスル)を使いこなしているというわけなのだ。

ここからは指導者によって意見の分かれるところではあると思うが、仮に目指す目標が「美しい姿勢で大きな声量を発する」というのであれば、レッスンの初歩の段階からその様な呼吸鍛錬(軸を立てて行う呼吸)をメニューに加えるのが妥当だと思われるが如何であろうか? もちろん、「身体を丸める腹筋や呼吸法ばかりを行い、後は膨大な台詞の稽古(応用)を延々と繰り返す」昭和の根性論的な稽古法も(自分も行なってきたし)嫌いではないのだけれど、その分のエネルギーと時間を他の身体強化法や技術練習に当てた方が遥かに効率的だと思うのは自分だけだろうか?

この辺りが最初に述べた「呼吸に関わる全ての身体運動を行う皆さんへの上達のヒントになってもらえれば」という願いの根拠でもあるわけで、その運動において一番力が発揮される姿勢が『真っ直ぐ』なものである場合はここに挙げさせてもらった考え方(練習メニューに "軸を立てて行う呼吸法" を導入する)が有効だと考えられるのだ(※)この辺りの事は各自で工夫研鑽していただければ幸いである。

(※)野球のピッチングやバレーボールのサーブ等、「身体を反ったり丸めたりする運動(引いては呼吸も)」ももちろん存在するけれど。


補足
先に「熟練の俳優は軸の効いた美しい姿勢のまま軽々と大きな声を出す」と書いたが、では、そのベテラン俳優たちも、一声一声、声を発する際にいちいち腰をクイックイッと回転させているのかといえばそんな事はない(笑)ではどうなっているのかというと、(筆者の体感の話として先述したが)腰の角度が、その時、その姿勢で一番相応しいものにほぼ自動で(無意識の内に)収まるという事なのだ。これはメカニズム的にいえば、これまでご紹介してきた『横隔膜をはじめとする呼吸筋群』と、いずれ別の機会に紹介させていただく『大腰筋』というインナーマッスル等が共同して『腹圧がかかると腰(軸)が立つ』という神経回路が構築されているという事なのだが、この様に無意識の内に身体が反応してくれるレベル( "技化" ともいう)にまで "動き" を自分のものにするためには、少なくとも1万回以上の反復練習が必要になるわけで、ここからは余談になるけれど、それ程の時間と労力を注ぐ熱意があるのならば出来るだけ『良質の型』に取り組む方が良いに決まっているわけで、ここで紹介させてもらう幾つかの呼吸法が皆さんにとってのそれになれればと願う所存ではある♡



腰(骨盤)の軸の意識

これから呼吸の実践に入る前に共通認識として持っておいていただきたい情報がある。

それは "俺流呼吸法" を実践していただく際には、いつも『骨盤を水平に貫く軸』を意識してもらいたいという事。丁度、鉄製のパイプ(シャフト)がズブリと骨盤に刺さっているかの様なイメージだ(笑)


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骨盤を水平に貫くシャフト

この意識(イメージ)をしっかりと持って行えば、骨盤は自ずと正しい回転をするようになるはずなので(下の画像参照)

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真っ直ぐから反る回転

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真っ直ぐから丸まる回転

逆に、この軸の意識を持たずに散漫な状態で行うと、下の動画の様に "背骨を動かすだけの間違った回転" になるおそれがあるので要注意。

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腰(骨盤)ではなく背骨を丸めている


この意識(イメージ)を喚起させるためには実際に親指でお尻の脇のちょっと凹んだところを押してあげる事が有効だ。それによって慣れていない人にもイメージがし易くなるので。

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両手で『ダブルいいね!』

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イメージがし易くなるよ♡



腹式呼吸時の腰のタイプ二種

お約束の通り、いよいよ次回から腹式呼吸の実践法をご紹介するわけだが、その取り組み方として二つタイプを提示させてもらっている。

その一つは『腹に息を吸う時に腰が丸まる』というタイプの人向け。

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腹に息を吸う時に腰(骨盤)が丸まる
[ 実践法へ ]


もう一つは『腹に息を吸う時に腰が反る』というタイプの人向けの方法論だ。

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腹に息を吸う時に腰(骨盤)が反る
[ 実践法へ ]

要するに、ご自分が "腰が丸まっているタイプ""腰が反っているタイプ" かという事なのだが、その見分け方としては、鏡を見ながら、若しくは他の人に確認してもらいながら、肩幅に両足を開き、なるべく全身をリラックスさせながら大きく腹に息を吸ってみて欲しい。その時の自然な身体の反応を見てどちらのタイプかを判断するわけなのだが、中には「よく分からない」という方もおられるだろうから、そういった方達にはとりあえず両方のタイプを試してみる事をお勧めする。そうしてなんとなくしっくりくる方を選んでもらえれば良いのだが、それでも分からない場合にはそのまま両方を鍛錬していただければと思う(笑)それでも全く問題は無いと思うし、『逆腹式呼吸』への移行がよりスムーズになると思うので。


そう、このように一つの『腹式呼吸』に二つのアプローチを提示するというのは、逆に読者を混乱させるだけなのかもしれないけれど、その真意は、その後にご紹介する『逆腹式呼吸』へと容易に移行していっていただきたいという事に尽きるので、ここは簡単に投げ出さず、根気よく取り組んでいただければと思う。


それでは、次回こそ腹式呼吸の実践方法・・・
腹に息を吸う時に腰が丸まる』タイプをご紹介する事としよう。


乞う御期待、乞う熟読!!


・・・続く


by genshu-juku | 2019-05-05 15:28 | 垂直に伸びる背骨(連載) | Comments(2)

垂直に伸びる背骨_21 呼吸法前編③

腹圧について(腹式呼吸)

前回に引き続き腹式呼吸における『腹圧』のご説明をば。

腹式呼吸でお腹を凹ませながら息を吐いていく時、それと同時に背中側も引き寄せられ、腹腔内には下の図のような『上下に引き延ばすような力=圧力』が生まれる。歌にもいう「お腹と背中がくっつくぞ!」という状態だ(平成生まれの人達は知ってるかなあ?/ 笑)

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ここでいう "理想の姿勢=腰のポジション" とは、やはり逆腹式呼吸と同じく『立つ腰』であって、一見して "圧力が上下に分散されている" のがお判りいただけると思う。

そして、これも逆腹式呼吸の時と同じく、それ以外の腰(反る腰・丸まる腰)では腹圧が不自然に偏っているという事も(下図参照)

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これら "偏った腹圧" を過度に掛けた場合、身体各部に様々な支障を来すのも逆腹式呼吸に準じる。


腹圧と自然な呼吸(腰)との関係

ここで、いくら『立つ腰』が良いといっても、それだけで運動は成立し得ないというのも逆腹式呼吸の時と同じで、例えば次にご紹介するように、『腰を丸めながら腹を膨らませて息を吸い、腰を立てながら腹を凹ませて息を吐く』というパターン(※)などがある(表演ではない、古伝の太極拳老師などは思いっきり背中を丸めながら息を吸う。そこには "相手の攻撃をかわす" という戦略的な意味も含まれるけれど)

(※)腰を丸めると自ずと下腹が膨らむ(内蔵が下降する)ので "腹に息を吸い込み易くなる" という関係

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動画にするとこんな感じ


また、今の例とは全く逆に、腹式呼吸で『息を吸うときに腰が反る』という方も大勢いらっしゃる事とは思う。

そういう方達は元々が "反り腰"(この連載では『反る腰』と定義)である場合が多いのだけれど、もう一歩踏み込んで考えてみると、脚が『外股』である場合が多いとも考えられるわけで、皆さんもなんとなくお気付きのように、脚の(膝の)『外股』・『内股』というのは腰の角度を規定する大きな要因となっているのだ。

ここで膝の向きと腰の角度を整理させてもらうと

・内股の人は腰が丸まり易い

・外股の人は腰が反り易い

という事になるわけで、なので、前述した "腹式呼吸で息を吸う時に腰が丸まり易いという人" は内股である場合が多いと考えられるわけだけれど(← 戦略的、意図的に行っている場合を除けば)、ここでの膝と腰の関係は決して一方通行なものではなく『膝の向きが腰の角度に影響を及ぼし、その腰の角度がさらに膝の向きを規定する』というような双方向の関係だろうと推察されるわけで、一見単純に見えるこの法則性も実は運動を観察する上でとても重要なヒントが隠されているものなのだ。

どういう事かというと、特に武道において『立ち方』というものはその流派の技術的な根幹を表している場合が多く、内股で立つ流派には内股の、外股で立つ流派には外股の術理的な理(ことわり※)や戦術的な利点というものがあるわけで、それらを素早く見抜く上で『膝の向きと腰の角度の関係』を熟知しておくというのはとても重要な事なのだ。

(※)中国武術では身体の内側を流れる運動エネルギーを勁(けい)と呼ぶが(ダンスのウェーブに似たもの)内股と外股でそのルートは異なる

まあね、腹式呼吸一つをとっても「こういう場合はこうで、この場合はこう」みたいな複雑な解説は読んでる人達にも分かりにくいであろうし書いてる本人も面倒臭くてかなわない(笑)俺自身が何か一つの流派の長で「呼吸の際の腰はこれ一つ!」と言えたらどんなに楽だろうとも思うけれど、俺がここで目指しているのは "より多くの方達に呼吸の深奥を味わっていただきたい" という事なので、必然的に説明が多岐に渡るのは致し方ない事だと思っている。

また、話が大きくなるけれど、『人の持つ多様性をそのまま丸ごと受け止める姿勢』こそがこれからの時代には求められるものだと信じているので♡


熟達した呼吸と腰

逆腹式呼吸の時にもお話した通り、腹式呼吸が熟練の域に足した場合、腰の動きはほとんど外側に現れなくなる。もうお腹だけがベッコンベッコン出たり入ったりするだけね(笑)

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余談だけれども、前々回の『呼吸のメカニズム』でも解説したように、腹が出たり引っ込んだりする事で内蔵の血液が強制的に循環されるので(強力なポンプ作用)、布団の中で腹式呼吸を行ってから眠りに着くと次の日の疲労回復に驚くほどの効果がある。もちろん、腹式呼吸によって副交感神経が優位になり脳がリラックス出来るという効果もあるけれど、ここで言っているのは、生々しい実態として "滞った血" がギュンギュン循環させられるというお話(笑)

そう、経験から言えるけれど、バテはまず内蔵からくるんだよね。なので、なかなかバテが治らない時などは、ちょっと荒技になるけれど、寝る前に先ず逆腹式呼吸をガンガンやって(といってもせいぜい四〜五回で良いけれど)特に "腸に鬱積した血液" を無理矢理押し出した後で、ゆったりとした腹式呼吸で精神をリラックスさせるというやり方もある(これも "長めで静かなの" を四〜五回で可)

バテ気味な体質の方には是非お試しいただきたい方法ではある。


腹式呼吸と背骨の伸長

さてさて、腹式呼吸の腹圧についてご理解いただいたところで、重大な発表が・・・

本連載が始まった当初からお伝えしてきたように、背骨の伸長を引き起こす力の源は『逆腹式呼吸から生じる腹圧』には相違無いのだけれど、実は、実は・・・

腹式呼吸でも背骨の伸長は起こるのですよっ!!


腹式呼吸における "背骨の伸長と呼吸筋の関係"


「ぬわにぃ〜〜、てめえ今まで嘘ついてたんかっ?!!」ってお怒りにならないように(汗)俺のように東洋的武術を修行する者は大抵の場合 逆腹式呼吸から入らされたものだし、そもそも本連載の内容は俺自身の上達過程を元に構成しているものなので必然的にそうなってしまったのだけれど、間違いなく腹式呼吸でも『背骨の伸長』は起こるのだ。

俺がそれに気付いたのは、逆腹式呼吸で背骨の伸長を身に付けた随分後、何気なく腹式呼吸をしてたら意図せず背骨が上下に伸びはじめたのでビックリした記憶があって(笑)なので、長年腹式呼吸を鍛錬されてきた方達の中で「私も背骨が上下に伸びるけれど、私のはこの連載でいう背骨の伸長ではないのね?」って思われるかもしれないけれど

あなたはあなたで正しいんですっ!

って事を言いたいわけ。

それこそが先にも述べた人間の多様性って事にも繋がるからね♡


というわけで、腹式呼吸における背骨の伸長のメカニズムを、あくまで俺の身体の中で感じている感覚ではあるけれど、ざっくりと説明させていただくと、前述したように腹式呼吸の腹圧は上下方向に向かっているので、その力がダイレクトに背骨周りの深層筋(多裂筋)を引き伸ばし、お腹と背中がぺったんこにくっ着くような深い腹式呼吸を行う際には、そのまま背骨が上下に引き伸ばされる

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腹圧に押し出されるように背骨が伸びていく


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お腹と背中がくっつくぞ(笑)


ただし、逆腹式呼吸で説明したような『背骨が、一個一個、下から順番に引き伸ばされて行く』という感覚を得るためには、やはり『仙骨(骨盤の中心の骨)』が柔らかく動いて、下の図のように『腸骨(骨盤の左右の骨)』から独立して回転する必要がある(これをここでは『骨盤分離』と呼ぶ)またこの場合、逆腹式呼吸の時のように "骨盤(腸骨)が左右に広がる" 必要はないので、人によってはこちらの方が『背骨の伸長』を身につけ易いのかもしれない

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仙骨が腸骨から独立して回転する


余談だけど、これまで様々な運動を体験し、また体験しないまでも色々な運動に興味を持って観察し続けて来た者として一言感想を言わせてもらうなら、同じように、『軸・センター・中心線』等、背骨を真っ直ぐにする事を要諦とする身体文化においても、こと『腹式呼吸』でそれ行うのは西洋の身体文化に多いような気がする。ダンス等の指導言語に「胸を引き上げるように」というものがあるけれど、それを意識すると必然的にお腹が凹み腹式呼吸になるので。

またその逆に東洋の身体文化においては『軸・センター・中心線』の他に『肚(はら)・丹田(たんでん)』という風に『下腹(=腹腔)』に意識を置く事をも要求されるけれど、この場合は自ずと『逆腹式呼吸』になり易い傾向があると思う。

もちろん「うちは違うぞ!」と仰る方達も大勢おられると思うし、"一つの運動種目の中に腹式と逆腹式とが混在する" 場合も多いので(太極拳がそうだし、発声なども明らかにそうであろう)今述べた "傾向" はあくまで俺個人の感想であるとご理解いただいて、運動を観察される際の参考程度にしていただければと思う。


腹圧がもたらす福音

ここまで、主に "腹圧の危険性" に重きをおいて説明してきたけれど、前回にも述べたとおり、腹圧は『人が生きていく上で最も根幹となる運動エネルギー』には違いないので、常に意識をしながら上手に活用していただければと思う。

また、"過度な腹圧が脳に悪影響を及ぼす" 事は周知のこととしても、適度な腹圧と背骨のコントロールから生まれる『背骨の伸長』という状態(運動)こそが『脳を健康に保つ極意』ではあると信じるので、これからも懇切丁寧にそこに至る『道』を解説させていただければと思う。

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背骨の伸長が脳を健康に保つ



さてさて、次回からはようやく腹式呼吸のやり方をご紹介していこうと思うよ。

ホント、いつも前置き長くてごめんね〜
あきらめないで付いて来てくださいね〜〜 ( ´ ▽ ` )


・・・続く

by genshu-juku | 2018-12-09 15:03 | 垂直に伸びる背骨(連載) | Comments(2)

垂直に伸びる背骨_20 呼吸法前編②

腹圧について(逆腹式呼吸)

前回、呼吸のメカニズムに関してお伝えしたので、今回はもう一歩踏み込んで『腹圧』の話をさせてもらおうと思う。

『腹圧』とは、読んで字の如く、『腹腔(内蔵が収まる空間)』の中の "圧力" の事を指しているわけで、日常における小便や大便の排泄、くしゃみや咳等で異物を体外に排出する作用、後は女性が赤ちゃんを分娩する際の力の源であって、生命維持活動には無くてはならないものであり、こと身体文化にも同様の事が言えて、例えば発声する時の "声の大きさ" や、スポーツにおける "体幹の強さ"、伝統的な武道・舞踊においてはそのまま "威力" や "キレ" に直結するものであって、"人" が生きて生活していく上で最も根幹となる "運動エネルギー" と言っても過言ではないと思う。


また、本連載『背骨の伸長』のメカニズムに於いては、逆腹式呼吸によって生じた強烈な腹圧が骨盤底筋群を引き伸ばし、その伸長する力が骨盤の分離(腸骨と仙骨)を促し、さらに伸びようとする力が行き場を求めて背骨の隙間(椎間板)を下から、一個一個、順に引き伸ばして行くという手順を踏むわけで、正に『腹圧』こそが本運動(背骨の伸長)の、起爆剤、原動力となっている事が判る。

下に "背骨の伸長と呼吸筋の関係" を動画で示したので、「腹腔の空洞になっている部分には強い圧力が掛かっている」と想像しながらご覧いただきたい。




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高い腹圧が "背骨の伸長" を引き起こす


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骨盤底筋群が引き伸ばされ、骨盤が広がる



腹圧と姿勢の関係

腹圧の大切さはご理解いただけたと思うので、次に「腹圧が高まるタイミングはいつか?」という話に移ると、あくまで俺独自の定義をさせていただくと

・息を吸って止めている時(止息)

・息を吐いている時

という事になるのだけれど、要するに、便秘で息んでいる時をご想像いただければ分かり易いと思う(笑)

んで、"息み" が強ければ強い程 目的とする "効果が高い" のは皆さんもご経験からお分かりいただけるとは思うけれど(正にそれがスポーツや武道における "強さ" や "威力" に繋がるわけだけれど)ここで思い出していただきたいのは、その息む "タイミング" や "姿勢" が悪いと、例えば頭に血が上り過ぎたり、はたまた肛門に無理な力が掛かり過ぎたりして、脳や肛門を壊しそうになり、「ヤベッ!危ねえっ!!」って事になるわけで(← "脳出血" や "痔" )別な例を挙げれば、"くしゃみ" が物凄い力を発揮するのは周知の事だとは思うけれど、タイミングと姿勢を間違えれば、高齢の女性などでは背骨を骨折してしまう程の事故に繋がるわけで、腹圧を上手にコントロールする為にはいかにタイミングと姿勢が大切かが解ってくる。

ここでいう "正しいタイミング" というのは、『危なくない正しい姿勢が完了した時』の事を指すので(若しくは、運動に於いて、予備動作から本動作に移行する時)ここからは『正しい姿勢』に集中して話を進めて行きたいと思う。

で、ここで提唱する正しい姿勢とは真っ先に『立つ腰』であって、"この姿勢で行う逆腹式呼吸こそが理想の逆腹式" であるとお伝えしておきたいのだ(下図参照)

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逆腹式の理想的な腹圧


理想的な逆腹式呼吸が決まる時、腹腔内では上下左右に均等に圧力が分散される。特に注目していただきたいのは腰椎の背中側(一般的にはこの辺りを "腰" と呼ぶ。本連載では "骨盤辺り" を腰と定義する)も膨らんでいるという事。

このような状態を、大正〜昭和と活躍した導術(心身開発法)の達人・肥田春充(ひだはるみち)『腰腹同量(ようふくどうりょう)』と呼び、身体と精神(脳活動)が最も力を発揮するための必須の在り方だと説いている。

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ここで思い出されるのは、俺が二十代の頃、俳優養成所で生まれて初めて受けた『発声』のレッスンで、先生から「腹だけではなく腰も膨らませるように」と指導されたのにも関わらず、当時の俺には全くその意味が理解できず、ひたすら腹筋を締めて目を白黒させていたという事だ。

身体的な理論などには目もくれず、「外側の筋肉だけつけていれば大丈夫!」っていうか、内側にも筋肉がある事すら知らなかったあの頃の俺が、 "腰の角度" や、ましてや "横隔膜" などに思いを馳せる事など到底不可能だったろうけど(笑)


さてさて、"均等な腹圧" が大切な事が判ったとして、それでは "均等ではない状態" はいかなるものかというと、下の画像にあるように、腰が丸まり過ぎたり、反り過ぎたりするする場合で(他にも色々な体勢があるだろうけれどここでは割愛する)一見して圧力が偏っているのがお判りいただけると思う。

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逆腹式の不均等な腹圧


脅かすわけではないけれど、このような状態で強すぎる腹圧を掛けてしまった場合(例えば "くしゃみ" や "急に重いものを持った時" 等 )偏った圧力が腹腔内の弱い部分に集中してしまい、痔や脱肛、女性の場合は膣から身体の外に臓器が出てしまう『骨盤臓器脱』などを引き起こす危険性があるので十分に注意していただきたい。

また脳圧が上がり過ぎる事も呼吸法の重大な問題であって、"トイレでの息み" が脳出血の原因の一つである事からもお分かりのように、不自然な腹圧の偏りは簡単に脳にも達してしまうので、腹圧のコントロールには慎重すぎるくらいに気を配っていただきたいと思う(※)

(※)いずれ詳しく解説させていただくつもりではあるが、東洋の身体文化にはそれぞれに『腹圧が脳に達するのを上手に回避するための首の動き』というものを有している。例えば昔のカンフー映画の中で「相手に突きを食らわす瞬間にわざとソッポを向く」という伝統的な振り付けがあったけれど(懐かしい〜)、それは『身体の内側で生み出した運動エネルギーを余すところなく拳に誘導する』という意図の他に『脳に向かって上昇する腹圧をその直前で回避する』という二つの極意を表現したものなのだ。


さてさて、腹圧の危険性とそれをコントロールするための腰のポジションについては判っていただけたとしても、運動やスポーツには多種多様な動き、"腰の構え" があるわけで、例えば野球のピッチング動作では大きく上体を仰け反らせた上で一気に前傾(丸める)させたり、体操の前宙やバック宙に至っては膝を抱え込んで完全に身体を丸くさせたりするわけで、なので、『立つ腰』が良いから何がなんでも『立つ腰』でやりなさい!と言ってるわけでは決してない事をご理解いただきたい。

また、ここでいう『立つ腰』の説明が適用されるのは、主に "技が決まった時、もしくは一番力を発揮する時に上半身が真っ直ぐになる運動" であって、その運動文化の口伝(教え)の中に 『軸』・『センター』・『中心線』・『頭の天辺から吊られる』 等、"身体を真っ直ぐに保つための意識" を喚起させる言葉が含まれているものであるという事も併せてご承知おきいただきたい。


腹圧と自然な呼吸(腰)との関係

前述した通り、"人の織りなす動き" には様々な局面が存在するわけであり、それは "軸・センター・中心線" 等を術理の根幹とする運動にも当てはまるわけで、いくら『立つ腰』が理想とは言っても、激しく動き回る武道や舞踏に於いて「立つ腰だけで完結させなさい!」と言われてはそりゃあ無理がある(笑)

一般的な例としては、逆腹式呼吸の場合、『腰を反りながら胸を膨らませて息を吸い、腰を立てながら腹を膨らませて息を吐く』というパターンが多く見受けられる(※) 例えば武道の "突き" において、準備動作で腰を反りながら息を吸い(尚且つ息を溜め)、腰を立てながら一気に拳を突き出す(と同時に息を吐く!)という一連の動作があるが、これなどは目的とする動作(この場合は突き)と呼吸が実に良くマッチされた状態だとは言えよう。

(※)腰を反れば必然的に胸も反り、ひいては胸郭(肋骨)をも広げやすくなるので "胸で息を吸い易くなる" という関係

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動画にするとこんな感じ


但し、このような状態も、あくまで多種多様な "呼吸と動作のバリエーション" の中の一つであって、これが全てではないということをご承知おきいただきたい。中には、上記の在り方とは全く逆のパターンで逆腹式呼吸を行う運動もあるかもしれないので。


熟達した呼吸と腰

ところで、ですな・・・

ここまでの話の流れをひっくり返すようで恐縮なんだけれど、呼吸法だけを取り上げれば、熟達するに従って腰の動きは外見からはほとんど分からなくなるようになってくるのですよ。そう、腰とか全然動かしてないように見えるのね。お腹と胸だけが大きく膨らんだり凹んだりしている感じ。

これはどういう事かというと、"腹腔内で呼吸筋群やら骨盤の関節(仙腸関節)やらが目一杯動いている" って状態なんだよね。なので『外側の筋肉をあまり動かす必要がないくらい内側の深層筋群や骨が使えている』って事になる。

表向きはシレッとして何の努力もしてなさそうにしてて水面下では必死こいて動いてるって感じ?(笑)

このような領域が何に役立つのかというと、武術で言えば "戦略的に優位" だからだよね。"相手に動きを読ませない" という意味において。で、どういうトレーニングをするのかというと、単純に『外側をなるべく動かさない様に意識する』だけ。そうすると、初めは外側につられて動きづらかった内側も、時間を経るに従って徐々に動かせる様になってくる。これは、太極拳を始めとする内家拳(内側を主とする武術の総称)の常套手段なんだけれども、やはり最初からそうするのではなくって、初心の内は内側も外側も偏りなく錬磨し、十分に動かせる様になってから徐々に移行するのが良しとされている。

「武術は志さなくとも更なる呼吸の高みを目指したい!」と望まれる方には、是非、挑戦されてみては?と思うけれど、その際には、適宜、外側の筋肉も一緒に動かしてあげて身体を硬くされないよう気を付けていただきたい。

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まあ、一般の方達にはこういう状態まで目指さなくても、しっかりと "内側と外側を動かした呼吸" を続けていれば『背骨の伸長』には十分辿り着けるので、敢えてここまでは要求しません。「そういう事もあるのだなあ」というくらいの認識を持たれるだけで結構ですので。



次回は引き続き『腹式呼吸における腹圧』の解説をいたしますのでお楽しみに〜 ( ´ ▽ ` )


・・・続く



追記
この原稿を書いている最中、たまたまテレビで『逆腹式呼吸を伴った筋トレ』なるものが紹介されているのを見かけた。「マスメディアで逆腹式呼吸が紹介されるなんて時代も変わったなあ」という感慨を持ちながらも、その即効性のみを前面に打ち出した、この連載でも口を酸っぱくして言ってきた "逆腹式呼吸の危険性" には全く触れない喧伝の在り方には疑問を持たざるを得なかった。あれをそのまま実行すれば、若く健康な人達には問題ないとしても、中高年の方や、若くても身体が丈夫でない人達の中には頭がクラクラしたり "原因不明の腹痛"(←実はインナーマッスル痛)に悩まされる方が出てくるであろうに・・

地味でも、誰にも見向きされなくても、自分が正しいと思った事は伝え続けていかなければと決意を新たにした次第ではある。

by genshu-juku | 2018-12-03 11:58 | 垂直に伸びる背骨(連載) | Comments(0)

垂直に伸びる背骨_19 呼吸法・前編 _①

呼吸のメカニズム

さてさて、ストレッチ編の途中ではあるけれど、必要性を感じたので『呼吸法の基礎』だけは先にご紹介しておきたいと思う。呼吸のなんたるかを漠然とでも良いので知っておく事ができれば、今後の展開への理解もスムーズに進むと考えたので。

というわけで、今回は『呼吸のメカニズム』について。

頑張って CG 作ったので(笑)
少しは分かりやすい内容になってるのでは?と自負しています。

但し、今回はメカニズムのみのご紹介とし、実践法はあえて載せていないので悪しからず。先ずは全体的なイメージと理屈を大体で良いので頭に入れておいていただきたいと思う。

もちろん、これからご紹介する三つの呼吸を動画を参考に試していただくのは大歓迎だ。

その場合は以下の要点

・吸う時は鼻から

・吐く時は 鼻か 口から
(勢いよく吐けば自ずと口から出て行きます)

・姿勢は真っ直ぐに

・特に上半身はリラックスさせて


を守って行っていただければと思う。

また、各呼吸に関してはいずれも "楽に" 行っていただきたいと思う。身体が出来ていないのに(各部分が柔軟でないうちに)いきなり力んでしまっては、呼吸が生み出す圧力の "逃げ道" が無くなり、脳をはじめとする内蔵諸機関にダメージを与えかねないので。


それでは、張り切って行ってみよ〜〜!!



『腹腔(呼吸筋群)』



『腹腔』とは腹部の内臓が収まっている空間を指す。その空間を構成する四種の筋肉(群)をここでは呼吸に関わる筋肉として "呼吸筋群" と呼ばせていただきたい。

内訳は次の通り

横隔膜(図では赤色)
腹横筋( 〃 黄色)
多裂筋( 〃 緑色)
骨盤底筋群( 〃 青色)


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中でも重要な役割を果たしているのが、胸部と腹部を仕切っている膜状の筋肉 "横隔膜" だ。この横隔膜が(膨脹と収縮を伴い)上下に動くことによって、肺が、ある時は横に広がり、ある時は縦に引き伸ばされて深い換気(呼吸)が行われるという仕組みになっている。

また、横隔膜が上下する際には他の呼吸筋も連動して動くという構図になっており、その関連性は下の図の通り

横隔膜が下がれば 腹(腹横筋)が膨らみ 骨盤底筋群も下がる
横隔膜が上がれば 腹(腹横筋)が凹んで 骨盤底筋群も上がる

となっている。


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なぜこのような連関が生まれるのかというと、そこに "内臓" が関与しているからで、簡単な話、横隔膜が下がれば、それに押される形で内臓が下降し、内臓に押し出される形で腹(腹横筋)が膨らみ、それに伴って骨盤底筋群も下に向かって膨らむ(下る)という構図だからだ(上がる時はこの逆のメカニズム)

なので、十全な呼吸を行えるようになるための条件とは、もちろん呼吸筋群そのものの柔らかさが重要なのは言うまでもないが、先ずは『内臓が柔らかである』ということが言えると思う。

「筋肉が、硬い、柔らかい」というのは聞いたことがあるが、「内臓の硬さや柔らかさ」なんて初耳だという方もおられるかと思うが、生まれたての赤ん坊や子犬や子猫のお腹を想像していただければ了解していただけると思うけれど、若い内臓はプニョプニョのポニョポニョなのですよ(笑)それが歳を取ってくるとだんだんと硬くなってくる・・その硬さが限界点を超えると病気になる。肝硬変とか言うじゃないですか!

要するに、硬い内臓では血液の循環が滞りがちになる・・・血液の流れが滞れば不純物の排泄がうまく行かず、また栄養や酸素も供給不足になってしまうというわけなんだけれど、特に小腸や大腸に鬱積している血液は、中医学では万病の元と言われていて、慢性の倦怠感やお肌のトラブルもこの鬱血によって引き起こされていると考えられている。

ということで、"内臓の柔らかさ"とは、健康に直結するとても重要な要素であり、呼吸法によって内臓を上下に無理やり引っ張り上げたり、押し潰したりする、半ば強引とも取れる血液循環(笑)は、実に若さを保つ秘訣であろうと考えるわけだ。

また、物理的にも内臓が柔らかであればあるほど、より上下に移動してくれるので、その分 肺の "伸縮" と "膨脹" の度合いも大きくなり、空気の入れ替え、つまり呼吸がより深くなるというわけで、"健康" と "呼吸のパフォーマンスの向上" という二重の意味において内臓の柔らかさは重要でもあるのだ。

ここで、「私はちょっとしかお腹が出たり引っ込んだりしないので、きっと内臓が硬いのだ」と心配されるなかれ。手足の筋肉と同様、内臓もトレーニングを重ねることによって少しずつ柔らかさを取り戻すものなので、気楽に、気長に取り組んでいっていただきたいと思う。


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赤ちゃんのポニョポニョお腹は健康の象徴 ♡


内臓の柔らかさに触れたついでに "腹筋の柔らかさ" についても言及しておきたいと思う。

世の中の美意識は、今のところ "バキバキに割れた腹筋が美しい" とされているみたいだけれど、こと呼吸法の観点からすれば、硬く締まり過ぎた腹筋は、いくら内臓が柔らかくとも、「腹を膨らませたり凹ませたりするのが難しい」という点において呼吸法には向かないと言わざるを得ない。呼吸法に関していえば、腹筋はあまり硬すぎず、よく伸び縮みするものが望ましいと言えよう。

こう言うと「締まりの無い腹筋では十分なパフォーマンスが発揮できない」と仰る方が必ずおられるけれど、それは大きな勘違いをなさっていて、要するに「柔らかくよく伸び縮みする」と言う事を「単に たるんでいる」と誤解されているだけで、決して "たるんだ腹筋" を推奨している訳ではないという事をご承知おきいただきたい。

また、パフォーマンスの向上という観点から見てみても、今は盛んにインナーマッスルという事が言われ、様々なトレーニング方法が紹介されているけれど、腹筋を初めとする外側の筋肉をガチガチに固めてしまっていては、折角のインナーマッスルも力を発揮する場を失ってしまうことになりかねないのだ。

何故なら、今回ご紹介している呼吸筋群こそがインナーマッスル中のインナーマッスルであって(もちろん他にも色々あるけれど)、動画をご覧になっておわかりのように、腹の内側でこれほどの運動が行われているという事実があるわけで、それがたとえ呼吸に関わる運動であったとしても、その運動が外側のパフォーマンスに影響しないなどということはあり得ないわけで(現に武術界では『呼吸筋群から生まれる運動を手足に伝える』という方法論を採る)、繰り返しになるが、腹筋を硬く締めてしまっては腹が十分に出たり入ったり出来なくなり、引いては呼吸筋群の動きを制限してしまうことに繋がるからだ。

まあ、美的センスからいえば、若い人達に「腹筋とか そんなに割れてなくていいから」とは なかなか言えないけどね(笑)

なので、若いうちは腹筋バキバキで運動してもらっても全然構わないと思うし、それでも呼吸法に興味があると仰るなら、ストレッチの一環として「健康のために腹の中も伸ばしといてやるか」くらいの軽いノリで取り組んでいただければと思う。その習慣は年齢を重ねるごとに徐々に(もちろん良い意味で)効いてくるはずなので。



『胸式呼吸』




胸式呼吸のメカニズムは読んで字の如く『胸で吸って胸で吐く』ということ。吸う時に肋骨(胸郭)を、前後左右に、立体的に開くことによって肺を拡張させるわけで、その際に横隔膜も上に引き伸ばされるので腹も自然と(少しだけ)凹む(横隔膜を意識的に引き上げているわけではない)

「肋骨が開いたり閉じたりするの!?」とビックリされるかもしれないが、肋骨と肋骨の間にあるのも "肋間筋" という筋肉なので全然不思議ではないのですよ(皆んな大好きなスペアリブね ♡)『よく伸び縮みする筋肉が良い』とされるのはここでも同じと言うことですな。


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胸式呼吸で気を付けていただきたいのは、次に挙げる『腹式呼吸』に比べ、発声やヨガ、ピラティス等の身体文化によってその解釈が微妙に異なると言うことだ。

思い付くままに挙げれば

<一般的にいわれている事>

・肋骨は横方向だけに開き、腹は動かさない

・その際に肩を上げてはいけない

(上とは逆に)

・肩を上げることによって息を(肺に)吸い込む

・肩が上がり緊張してしまうので肩こりの原因となる


ということになるのだが、これらを全て網羅することは到底不可能な事なので(全く逆の事を言ってたりするので)ここでは『俺は30年間こうやって鍛錬してきました』という "俺なりの方法論" をご紹介するつもりだ。読んでいる方々にはそれでは不安に思われる方も多くおられると思うので、ご自分で色々調べてみて、最終的にご自分に合った胸式呼吸を選んでいただければと思う。

なので、改めて俺流の胸式呼吸の要点を述べさせてもらうなら

<俺流>

・肩は上げない

・肋骨(胸郭)を前後左右に広げる

・その際 横隔膜も上に引っ張られるで 腹も自然に(少しだけ)凹む

・横隔膜に下から押されるので、肺は、鎖骨あたりまで、上にも膨らむ


ここで最も大切な事は "肩を上げない" という事。肩が上がってしまっては、一部の方達が主張しているように、肩周り、引いては首の周辺が緊張してしまうので、腕を使うパフォーマンスや発声に悪影響が出てしまう

それでは、何故肩が上がってしまうかといえば、肋骨の上部を開こうとするする際に、その周辺の鎖骨や首、肩周りの筋肉が硬いために "拡張しようとする力" の行き場がなくなって肩を上げてしまうというわけだ。まあ、そもそも、肩周り、首周りの筋肉の硬い人達は肋骨の上部も開かないものなのだけれど。

なので、俺の言う胸式呼吸を実践していただくためには、先ず第一条件として『肩周り・首周りの筋肉を十分に柔らかくしていただく』という事が言えると思う。肋間筋(スペアリブ)の柔軟性はそれにつられて自ずと着いてくるものなので。

肩周り・首周りの筋肉を柔らかくするためにどうすれば良いのかというと、先ずは前回ご紹介した "猫のポーズ" を根気よく続けておいていただきたいと思う。かのストレッチは、肋間筋の柔軟性も含めて、非常に効果の高いものだから。



『腹式呼吸』




腹式呼吸とは『吸う時に腹が膨らみ、吐くときに腹が凹む』、要するに『腹で 吸って腹で吐く』呼吸を指す。

そのメカニズムの中心は "横隔膜の上下運動" であり、横隔膜が下降することによって肺が縦に引き伸ばされてその容量を増し、横隔膜の上昇によって肺が上に押し潰され、内包する息を外に吐き出すということになる。だから、結局、空気を出し入れしてるのは肺に他ならないわけで、その肺を変形させている元(原動力となる筋肉)はどこか?という話なんだよね、◯◯呼吸と呼ばれる要因は。


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この腹式呼吸こそは、発声法やその他リラクゼーション法(引いては普段の健康維持)に於いても極々一般的なものであり、基本中の基本ではあるので、しっかりと練りこんで(鍛錬を積んで)、出来れば日常生活の中で意識しなくても腹式呼吸で居られるようにしておいていただきたい

個人的には呼吸の練磨には終わりが無いと思っていて、単純に肉体的な面だけに言及してもその深さは果てしがなく、例えば、十年も賭けて呼吸筋群や内臓を柔らかくし、横隔膜も十分下降するようになって、もうこれで完成だろうなどと高をくくっていると、ある日突然、丁度足元の地面がズブズブと沈んで行くかのように、骨盤の底の底、"骨盤底筋群" が呼吸に参加し出して(それまでは使えずに眠っていた)、呼吸の質が一変するなどという事は日常茶飯事な事なので、皆さんにも、是非、この深淵な世界を楽しみながら歩まれて欲しいと願う。


ここで骨盤底筋(群)に関する注意を一つ

昨今、テレビの健康番組等に於いて普通に "骨盤底筋" という言葉が聞かれるようになり、ましてや "女性の尿もれ対策としての筋トレ" なども紹介されるに至っては、時代も変わったなあと隔世の感を禁じ得ない。10〜20年前、若い女性達にこの辺りの説明をする時の苦労ったらなかったんだもの(笑)それはさて置き、筆者が身を置く中国武術や気功の世界に於いては、この骨盤底周辺の開発(トレーニング)は『"修行の最終段階" に "自然と開かれる" のが良い』とされていて、どういうことかと言うと、この辺りは非常にデリケートな臓器が密集しており、尚且つ、骨盤底筋群そのものもとても繊細な作りをしているので、まだ身体が出来ていない状態で(硬くて融通の効かない段階で)無理にこの周辺を酷使すると致命的な故障を引き起こしかねないと考えられているからだ。事実、この俺も、若い頃はもちろん、30年間呼吸を練ってきた今でさえも、オーバーワークでこの辺りを傷めてしまい、股間、特に肛門の痛み(←痔ではないよ)で夜も眠られないのなんかザラなのだ。

もちろん、やり過ぎなければ、尿もれ対策としてその周辺の筋トレを行うのは間違ってはいないと思うのだが、一つ大切な事として、前述したように腹腔の呼吸筋群が、満遍なく、 "連動して動く" ようになりさえすれば、特に骨盤底を意識しなくとも、呼吸をする度に、自然と肛門や尿道が締まってくれるようになるわけで、そこをしっかりと頭に入れて、遠回りには感じるだろうけれど、あまり偏る事なく、全体的なバランスを考えながら、気長に呼吸法に取り組んでいただきたいと思う。

ちなみに、『呼吸筋群が連動して動く』という状態は、何か特別な事ではなく、我々が生まれながらに持っていたにも関わらず、多くの人達が成長するにつれて忘れてしまった事に他ならないのだ。生まれたての赤ん坊を思い出してもらえばお判りのように、彼らは息をする度に、それと連動させるように手足をバタつかせているではないか!それを現代の大人達は「身体が未分化なのだ」と捉えているようだけれど、武道その他の修行者達にとっては、呼吸と手足、引いては全身が連動しているその状態こそが "目指すべき目標" であって、言葉を替えれば『大人になって忘れてしまった "生まれたてのあの状態" に戻る事こそが修行』なのだということだ。



『逆腹式呼吸』




逆腹式呼吸は上述した二つの呼吸、胸式と腹式の複合型とも言え、少々難しくなるのだけれど、『吸う時に胸が膨らみ、吐く時に腹が膨らむ』というもの。言い方を変えれば『胸で吸って腹で吐く』という事になるのだけれど、胸式の要領で肺を目一杯に広げて息を吸い込み、横隔膜を限界まで下降させ(腹を膨らませながら)"肺を細長くして息を吐く" という仕組みなのだ。

で、この『腹を膨らませながら息を吐く』という状態が非常に不自然でキツいわけなのよ(笑)だって通常の腹式呼吸では(腹を膨らます)その状態で息を吸うわけだし、その方が自然なわけじゃない?だって、肺が細長くなればそれだけ容量が増えているってことだからね。

ま、理屈で考えれば、胸郭を広げて空気を取り込み、その次に横隔膜を下げていけば・・という事は肺の形を元に戻していけば、ある段階まで空気が抜けて行く事は容易に理解できる。でも、その境界を超えて横隔膜を下げていけば、肺の容量だけを見れば再び増えていくわけで、それでも息を吸わずに吐き続けるという事は、こここらはあくまで自分の体感の世界に過ぎないのだけれど、肺が細長い状態から、さらに、僅かではあるけれど縮小するという事で(← 丁度 風船が萎むように)、この状態は身体的にとても負荷の掛かる状態ではあるけれど、こと "鍛錬" という観点から見れば、呼吸に関わる深層筋群も、ましてや肺という臓器そのものも鍛えられるという、正に "呼吸鍛錬の王道" とも言える方法なわけだ(笑)

ちなみに、腹を膨らませて息を吐き続けた後、ふっとそのホールドする力を緩めた途端、自ずと、雪崩れ込むように空気が肺に入ってくる爽快感は何物にも代え難いものだ(キツいだけにね ♡)


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なので、この逆腹式呼吸はもっぱら武道・武術家(その他 "修行" を人生の目標とする人達)によって鍛錬されてきたという歴史があるわけで、それだけハードなものではあるけれど、それは、イコール、鍛錬の効果が非常に高いという事になるわけで、胸式と腹式をしっかり鍛錬してきた人達が更に上を目指す為には打って付けの鍛錬法だと信じている。

なので、この連載に於いても、先ずは腹式呼吸からゆっくりとその実践法を紹介して行って、しばらく間を開けてから、仕上げの段階として逆腹式呼吸の実践法をご紹介できればと思っている。


ちなみに、これをお読みの方達の中で、発声法などで既に呼吸の鍛錬は十分こなされて来たという方々には、是非、動画を参考に逆腹式呼吸を体験していただきたいのだけれど、一次的に、声質が変わってしまったり、喉を締める癖がついてしまったりと、やはり、完全にモノにするまでは副作用的な状態も経験される事になるとは思うので、その点は十分認識された上でお試しいただきたいと思う(ちょっと体験される分には全く問題ありませんので)

また、その際の注意点としては『胸式や腹式呼吸に比べて より一層 上半身をリラックスさせる』という事が挙げられる。

逆に言うと、上半身が完全にリラックスしていないと逆腹式呼吸を行うのが難しいという事になるのだけれど、それが体現出来てしまえば『腹にはしっかりと力が入っていて(腹圧が掛かっていて)尚且つ上半身が柔らかく使える』という身体運動においては理想的な状態を手に入れる事が出来るのだ!



『呼吸の精神への影響』

呼吸法を語る際にセットにして語られる事がある。そう、"精神への影響" だ。

よく言われるのは

・胸式呼吸は交感神経を刺激してヤル気を出させてくれる

・腹式呼吸は副交感神経が優位になってリラックスさせてくれる


ちなみに逆腹式呼吸の精神的効用はというと

・逆腹式呼吸は強烈な精神の安定をもたらす


と言われていて

どういう事かというと、面接とか何かもの凄く緊張する場面に於いて、胸式呼吸でテンションを上げるのも、腹式呼吸でリラックスを誘うのも正解ではあるのだろうけれど、「テンション上がり過ぎて注意力が散漫になって要らない事を口走ったりしないか?」とか、「リラックスし過ぎて逆にヤル気の無い様に映りはしないだろうか?」とかいう問題があるわけで、そういう時にこそ、面接の直前まで逆腹式呼吸を続けて本番に望めば、『心は深く落ち着いているのに、頭や身体は澄み渡り、キレキレのパフォーマンスを演じる事が出来る』という理想の状態に持って行く事が可能なのだ。

そう、逆腹式呼吸のもたらす『強烈な精神の安定』とは、決して "眠ったようなボンヤリとした状態" ではなく、『泰然と物事を俯瞰し、いざという時には疾風怒濤の如くに動ける』という、正に、表現者・アスリートとしては理想の状態を指すものなのだ。

また、このような状態を昔の人達はなんと言ったかというと

・肚(はら)が出来ている

・肚(はら)が座っている


と言ったわけで

昔の言葉で『肚を練る』といえば、「あえて精神的に辛い状況を体験すると」いう場合を除けば、逆腹式呼吸 様 の鍛錬を指したものなのだ。


ちなみに、なぜ呼吸法が精神に影響を与えるのかといえば、『神経叢(しんけいそう)』という神経が網目状に集まった、まあ "神経の集積所" みたいなものへの理解が必要で、神経が寄り集まっているなら、それらを上手く刺激できれば、当然、脳にも良い影響を与えるわけで(もちろん逆の場合も起こりうる)、なんと、呼吸の要である横隔膜には人体で最も大きな神経叢と言われる『太陽神経叢』が存在し、また、呼吸法が関わる最下端の骨=仙骨には『仙骨神経叢』があって、呼吸法を深く、骨盤の奥底まで行うという事は、この(主に)二つの神経叢に刺激を送り続けるという事に他ならないというわけなのだ。


(神経叢の CG、めんどくさくってスルーしました。各自でググってください / 笑)


さてさて、何となく呼吸のメカニズムを頭に入れていただけたとは思うので、次回からはいよいよ呼吸法の実践に移るとしよう。

途中でも書いたけれど、先ずは腹式呼吸の実践法を・・その後はストレッチ編に戻ってもう少し身体を柔らかくしてもらってから 胸式→逆腹式 へと進む予定だ。

先が長くてウンザリするかもしれないけれど
気長に、気楽にお付き合いいただければと思う (*´∇`*)


・・・続く


追伸
ここに掲載した内容(動画、画像も含む)は、筆者に許可を取る必要はございませんので、自由に、シェア、ご活用くださいますように。それによって、身体文化、引いては皆様のご健康に寄与できるのであれば望外の喜びであります。

by genshu-juku | 2018-07-19 17:11 | 垂直に伸びる背骨(連載) | Comments(3)

垂直に伸びる背骨_18 骨盤と背骨のストレッチ_⑤

ヨガ・猫のポーズ 〜 呼吸トレーニングへの導入

前回のダンス・ストレッチでは、この連載が始まって以来 初めて『丸まる腰から姿勢を真っ直ぐに伸ばす』ということに言及したため、多少混乱された方もいらしゃった事と思う。なんせこれまでは『反る腰から真っ直ぐに伸ばす』ことだけを説明して来たからねえ。

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『反る腰』から真っ直ぐに伸ばす

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『丸まる腰』から真っ直ぐに伸ばす


と言うわけで改めて説明させていただくと、もうお判りの通り、姿勢を真っ直ぐに立てる過程は『反る』から『丸まる』からの大きく分けて二つあるという事になるわけで(左右は除く)、後は、そもそも姿勢が良くって(← 生活様式等のお陰で)最初から腰が立っている(真っ直ぐな)人もいるけれど、今は『反る』からと『丸まる』からの二つの腰に話を集中させていただきたい。

で、俺の体験から持論を申し上げると、『両方を満遍なくトレーニングした方が上達は早い』という事に落ち着くのだ。

西洋式のダンスに慣れた人達にとっては奇異に映るかもしれないけど、東洋の武芸には "反るなら反る" 、"丸めるなら丸める" という『一つの腰』しか使わないものが多いんだよね(もしかしたらスポーツにも同じ事が言えるかもしれないけど)もちろん、それぞれの武芸にはそれらの腰を採用する理由というものがあって、当然それは術理に関係する事でもあるのだけれど(実は開祖がそういう腰だったというオチにも繋がるのだけれど)、で、その事は全く否定される事ではなく、流派を挙げてその腰の鍛錬に励むべき事ではあるのだけれど、こと健康という観点からみると、ある意味偏ったあり方ではあるわけで、稽古が終わった後にはストレッチ等で満遍なく身体をほぐしてあげるのが現在の常識なわけで、これはこの連載のテーマでもある『背骨の伸長』にも同じ事が言えるはずで、やはり、二つの腰の両方から攻めて行った方が理解や上達も早いだろうし、腰を故障するリスクも減ると考えるのだ。

ここからは完全に余談だけれど、『自分自身の持つ腰』と『自分が学ぶ流派の腰』とのミスマッチというものがあるわけで、例えば『反る腰』の人が『丸まる腰』を基本とする流派に入門するなんて話はよくあるわけで、で、そういう人達は周りと比べて自分の上達が遅い事に苦しんでたりするわけだけれど、普通の指導者なら「あ、君は腰が逆だから自宅で十分ストレッチをしなさい」とか簡単にアドバイス出来るんだろうけれど、頭が固くて尚且つ勉強不足の指導者なんかに当たった日には自流の崇高な技術理念なんかを滔々と語られて、なんか分かったような分かんないような気分にさせられて、結局何も解決していないという不毛な努力を強いられてしまうわけで、なので、ここで俺が代わってアドバイスさせてもらいます。「普段から腰は満遍なくストレッチしておこうね♡」と(笑)で、自分の体験から言える事は、自分の腰と合わない流派を学ぶという事は、長い目でみれば己の身体の幅を広げるという意味で決して無駄ではないという事と、でも、やはり身体(特に腰)に掛かる負荷は "合ってる腰の人達" に比べれば格段に大きくなるので、それを自覚して、鍛錬はあくまで、慎重に、丁寧に進めていただきたいという事だ。


『ヨガ・猫のポーズ』

という訳でお待たせしました。腰と背骨を満遍なく伸ばす事の出来るヨガの猫のポーズをご紹介するとしよう。

非常にポピュラーなポーズではあるので、ヨガをやっていない方でも一度は目にした事のあるポーズではなかろうか? ヨガの門外漢ではある俺だけど、背骨と骨盤、そして肋骨と肩甲骨のストレッチに、また呼吸筋(呼吸に関わる深層筋群)の調整用として若い頃から愛用させていただいているものだ。

さてさて
お気付きの事と思うが

今回も新しいトピックが登場したよ!
肋骨と肩甲骨、そして呼吸だね!!

肋骨と肩胛骨は『背骨の伸長』を実現させるためには骨盤の次に大切な場所であると認識しておいていただきたい。骨盤から生まれ、上に向って垂直に背骨を昇る波動状の(うねりの)運動がスムーズに頭部まで伝わるには、途中にある肋骨もその運動に合わせて柔らかく波打たなければいけないわけで、肋骨が鳥籠のように硬いままではそこで運動がストップしてしまうからだ。また、肋骨を柔らかく動かせる前提条件として肩甲骨もゆるゆるに緩んでいる必要があるわけで、要するに肩胛骨が柔らかく振る舞えるという事は『肩甲骨と肋骨の間の筋肉』が柔らかく緩んでいるという事なので、言ってみれば『肋骨と肩甲骨』は『骨盤と股関節』の様な一対の関係にあるとご理解いただきたいのだ。

またこのポーズは呼吸を司る筋肉群も十全に活性化してくれるので、非常にやり甲斐のある呼吸トレーニングでもあるわけで、呼吸といえば、昔はよく「腹筋を鍛えろ!」とか言われたものだけれど、今の常識では、呼吸はそんな単純なものではなく(もちろん腹筋も必要だけれど)、先ずは横隔膜、そして腹腔を構成する腹横膜と多裂筋(背骨を支える)、それらの収縮から生まれる圧力を下で支える骨盤底筋等々・・・後は現代のスポーツシーンで盛んに言われ始めている大腰筋(主に大腿骨を振り上げるための筋肉)なんかも、強力な腹圧を生み出す支えとしては非常に重要な働きをしていると感じるわけで、色々聞きなれない筋肉の名前を出してしまったけれど(それは今後のCGによる解説に譲るとして)、要するに呼吸には今流行りの『インナーマッスル』が深く関わっているというわけで、そんな難しい知識を知らなくっても、この猫のポーズを無心にこなしていれば自然とそれらが強化されるという好都合極まりない仕組みになっているというわけだ(笑)

以上の理由から、今後ご紹介する呼吸の鍛錬に向けて、『最初から腰が立っている人達』にもこの猫のポーズはやり込んでおいていただきたいと思う。腰が立っていたとしても(理想的な姿勢だったとしても)腹の中の筋肉が十全に柔らかいとは限らないので。呼吸に関与する深層筋群は(まあ筋肉全般に言える事だけれど)柔らかければ柔らかいほど高機能のパフォーマンスを発揮できるものだから( "柔らかい" のと "たるんでいる" 事とは違うからね。念のため)

いつものように前置きが長くなったので
この辺でやり方のご説明をば(汗)




やり方

・基本ポーズは、両手は肩幅、両膝は腰の幅に広げて四つん這いとなる
 (両手は肩の真下、両膝は骨盤の真下辺りに置く)

・基本ポーズのまま準備の一息を吸う(吸息)

・背中を丸め、お腹を引っ込めながら息を吐いていく(呼息)
 (頭は両腕に間に入れていく)

・息を吐き切ったら、今度はゆっくりと息を吸いながら背中を反らしていく(吸息)
 (目線は斜め上を向く)

・『丸める〜反る』を1セットとし、3〜5セットほど繰り返す

・反った状態から、調整の一息を吐きながら基本ポーズに戻る(呼息)

・基本ポーズに戻ったら、そのままの状態で2〜3回深呼吸をする(調息)

・息を『吸うときは鼻から』、『吐くときは口から

・呼吸と動作はできるだけ一致するよう意識する
(呼吸と動作のスピードを一定にし、吸い終わったら、または吐き終わったら動作が終了するように)

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両手は肩幅に、両膝は腰の幅に

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両手は肩の真下、両膝は骨盤の真下辺りに

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背中を丸める時はお腹を見る様に

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背中を反る時は天井を見る様に

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終了の基本ポーズで呼吸を整える(調息)


『呼吸の狭間を大切に』

ここで呼吸に関する注意点を一つ。

それは、『呼吸の狭間(吸息と呼息の間、もしくは呼息と吸息の間)』、動画で示したタイミングでいえば時間にしてわずかに1秒くらいの間は、きちんと息を止めておいて欲しいという事。『止める』という言葉を使っては、ちょっと能動的に過ぎるかもしれないので、ここでは「きちんと止まってるよね?」と確認するくらいの意識で丁度良いかと思う。

東洋の呼吸法では『息を止める事』を非常に重要視する。今風に言えば、丁度、アイソメトリックス効果を狙っていると理解していただければこの段階では十分だと思うけれど、猛烈ないきみを伴って息を止めるやり方から、逆にいきむ事はせず、静かに長い時間(1分とか2分)息を止めるやり方まで色々あるけれど(※)とにかくこれらの方法は呼吸に携わる筋肉群を飛躍的に強化(呼吸力を上げる)するには持って来いの方法ではあるのだ。
(※)喉を締めて「カー!」とか「コー!」とかいう音を出すのもこの範疇に入ると考える。要するに出口を閉じて内側の圧力(腹圧)を逃さないようにしているのだ。

しかし、効果が高いという事は負荷が高いという事でもあるわけで、極端に強い止息(しそく)は真っ先に、内臓、特に心臓に負担を強いる事になり、また高い腹圧は脳圧をも高めるわけで、脅かすわけではないけれど寿命を縮める事にもなりかねない危険性をはらんでいる。また声を出す事を専門とされている方達(歌い手・俳優)にとっては、『息を強く吐こうとすると喉を締めてしまう』という悪い癖にも繋がる恐れがあるので(息を止める鍛錬の三倍の発声練習をこなせば克服できるけれど)常に危険と隣り合わせのトレーニングである事をしっかりと頭に入れておいていただきたいと思う。

以上の理由から、この連載において『強い止息の鍛錬』をご紹介するか否かはまだ検討中ではあるけれど、これらの危険性を差し引いても、息を止めるという事は非常にやりがいのあるトレーニングでもあり身体運動の上達の鍵を握るものでもあるのだ。

(ここからは中・上級者向けのコメントとなる事をご了承いただきたい)

よく『呼吸と動作を合わせる』というけれど、ほとんどの方達は『予備動作(例えば拳を引いてパンチの準備をする時)で息を吸って、本動作(この場合はパンチを出す!)で息を吐く』という理解をされている事とは思うけれど(戦術としてあえて逆をやる場合もあり)、俺は、その本質は息を止めている時、要するに『呼吸の狭間』にあると感じていて、先の例えでいえば、拳を引いて いざパンチを打ち出そうとする切り替えのタイミングは、丁度、呼吸が吸うから吐くに転じる間(ま)でもあり、極々注意深く身体の内側を感じるならば、呼吸に関わる深層筋群が吸うから吐くに転じようとする、正にその(呼吸の)動きが(※)、背骨を中心とする全身の骨格を通して手足に伝わり "表向きのパンチ" という動作を生み出している事に気付く事が出来るはずだ。
(※)表向きの息が止まっていても呼吸筋は次の呼吸に向けて動き続けているという事。俺は『静中の動』とはこの事を指していると考えている。

但し、上記の在り方が成立する為には、十二分に身体が練れ、『内側の深層筋群と、手足や腹筋・背筋等の外側の筋肉群が連動して使えるようになった者』のみにいえる事だけれども(太極拳では『内外一致』という)、逆にいうと、その様な状態(内外一致)にシフトするためには、この『呼吸の狭間』の深層筋群の動きを感覚として捉え、それを外側とリンクさせるという身体的・意識的トレーニングが不可欠であると断言しておきたい(これ、試験に出るからね!賭けてもいい!はらたいらに3000点!!

まあ、上記の様な深い状態にこの連載がどこまで迫れるのかは疑問だけれど、この連載の主眼でもある『背骨の伸長』においても呼吸は非常に需要なポジションを占めるものなので、後々時間を割いてじっくりとご説明する予定ではあるけれど、先ずは、初心の方々にも上級の方々にも、このヨガの猫のポーズでしっかりと呼吸に慣れておいていただきたいと思う。


予定していた股関節に関する説明は次回以降させていただきます。
悪しからず。


・・・続く


by genshu-juku | 2018-05-20 12:20 | 垂直に伸びる背骨(連載) | Comments(4)

垂直に伸びる背骨_17 骨盤と背骨のストレッチ_④

ダンス・ストレチ

さて、今回から数回に渡り、少し専門的な、という事は少しキツめのストレッチをご紹介して行こうと思う。というのも、武術や舞踊等の良質の型を何も考えずに何十年もやり続けて行けば、確かに目指すゴールには辿り着けるのかもしれないけれど、何事においても効率化が進み、スピーディーになって来ているこの現代に於いて、そんなノンビリした事を言ってたら大変勿体無いと感じるわけで、昔なら「ゴールに辿り着ければ本望」と考えられてたんだろうけれど、今の俺なら「ゴールに辿り着いてからが人生の本番じゃね?」って思うので、時間を掛ける事の大切さは誰よりも知ってるつもりではあるけれど、ここでは敢えて効率的な方法を開示して、多くの方々に、早く、この境地を味わっていただければと願う所存ではある。

但し、効果が高いという事はそれだけ身体に掛かる負担も大きくなるわけで、今後ご紹介するストレッチに関しては、プロのダンサーのような柔らかさまでは必要としないけれど、やっぱり、日頃からストレッチを日課にされている方達にのみお試しいただきたいと思うのだ。もし、そうでないという方がいらっしゃったならば、先ずは一般的なもので構わないので、しばらくの間(2〜3ヶ月は)それらで十分身体を慣らしてから、少しずつここにご紹介する方法を取り入れて行っていただければと思う(「早く」と言っときながら申し訳ない!)


ではでは、前置きが長くなったので
これまでの おさらい をば・・・(笑)

気を持たせるな!とお怒りになるなかれ、今回ご紹介するストレッチに直接関係する事なので、今一度、頭を整理していただきたいと思う。

といわけで、この長い長い連載を通して伝えたい事・・・さっきから話してるゴールとは、『背骨が、柔らかく、垂直方向に伸び縮みする状態』の事を指すわけで、俺的には、この背骨を総動員する運動が適度に脊髄神経を刺激し、引いては脳の健康に寄与すると考えているわけで、また、武道や舞踊等の身体文化を実践されている方々にとっては、身体の "芯" から伸びる "軸" の形成に、この運動がどれほど効果的に作用するかはご自分の事として容易にご理解いただける事と思う。

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この連載のテーマ『背骨の伸長


それでは、張り切っておさらいをしよう!

先ず最初に、この背骨の在り方に到達するまでの第一段階として、『腰と胸と頭が一直線上に乗る "ポジショニング" 』が必要になってくるんだったよね(下の写真参照)

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いわゆる『軸が利いている』状態


次に、このポジショニングを成立させる為には『腰(骨盤)を縦方向に回転させ、その回転を胸と頭に伝えて姿勢を真っ直ぐに立てる』という作業が必要だったはず(具体的な動作は下のGIF画像を参考にされたし)

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反る腰(腰が反り気味)』の人はこんな感じ


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丸まる腰(丸まり気味)』の人は上とは逆の動作になる


ここで大切な事は、前後方向の胸の位置(ポジション)は動かさないという事(若干上には上がる)。そして、単に胸を反っているわけではないという事を十分に理解する事で、あくまで『腰の上に胸を、胸の上に頭を、丁寧に乗せていく』という感覚を目指そうという話だった。

また『胸の位置を動かさない』という事は、慣れない人達にとっては意外と難しい事とは思われるので、以前ご紹介した 感覚養成法 を参考に理解を深めておいていただきたいと思う。


ダンス・ストレッチ

というわけで、ようやく本題!!
前置き長かったなぁ〜〜(笑)

今回ご紹介するのは、俺が30年前にアクション俳優の養成所でダンスの先生に教えていただいたストレッチ!! ここでは、あえてダンス・ストレッチ なんて呼ばせてもらうけれど、このストレッチが初めてという方向けに、また、狙う効果を『背骨の伸長』に特化させるために少々簡略化をさせていただいています・・悪しからず (^^;)




一見してお分かりの通り、開脚をしながら、骨盤を支点として背骨を真っ直ぐに立てている(軸は斜めになっているけれど)。言い方を変えれば、先にご紹介した、ここで言うところの『腰と胸と頭が一直線上に乗る "ポジショニング" 』を開脚をしたまま行っているという事なんだよね。

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開脚のまま背骨を真っ直ぐに立てる(軸は斜めで良い)


このストレッチの効能は計り知れなく、正直、これ抜きで自分は『背骨の伸長』を獲得出来ただろうか?と思うくらいのもので、何が良いのかと言うと、先ず動作そのものが『背骨の伸長』の基礎段階そのものだという事。次に、ここが一番大切なところなんだけど、腰と背骨、そして股関節の連携を正しい形で身に着ける事が出来るという事なのだ。詳しくは後述するけれど、『腰と背骨と股関節の連携』、言い方を変えると『腰と背骨と股関節が "一つのものとして機能する"(させる)事』が、背骨の伸長に於いては最も肝心なところだからだ。まあ、見た目通り、股関節のストレッチではあるのだけれど、目的はそこだけに留まらないと言う事だよね。

やり方は

・ご自分の股関節の許容範囲で開脚をし
 背中を丸めた状態で深く息を吸う

・息を細く吐きながら、ゆっくりと背骨を起こしていく
(その動きの起点は骨盤の回転から)

・背骨が真っ直ぐになった状態で一息吸い

・息を吐きながら、ゆっくりと元に戻す

・以上を3〜5回ほど繰り返す


注意点としては、なるべく力を抜きながら、丁寧に行うという事。

単純に "柔らかくする" 為だけの運動ではなく、腰と背骨と股関節の『神経回路の構築』を目的としているので、誰かに力づくで押してもらう等の外圧を掛ける事だけは厳に謹んでいただきたい取り返しのつかない故障を引き起こすおそれがあるので。

また、慣れないうちは、「自分がどれだけ真直ぐになっているか判断が付かない」と思うので、鏡を使うとか誰かに見てもらうとかしながら、自分の感じている感覚と実際の身体の在り方を上手に擦り合わせて行っていただきたい

特に最初のうちは、背骨を真っ直ぐにする為には「自分なりにかなり反らなくてはいけない」と感じるものなので、焦りは禁物で、これはストレッチでありながら筋力トレーニングでもあるのだから、柔軟性と筋力の増加に伴い、少しずつ、楽に出来るようになって行くはずなので、決して無理をなさらずに気長に取り組んで行っていただきたい。また、開脚の度合いも、すでに柔らかい人なら180度近く開けるかもしれないけれど、そうでない人も、気にする事なく、ご自分の開ける範囲で行っていただきたい。大切なのは、繰り返しになるけれど、腰と背骨と股関節を『三位一体』で動かせるようになる(動かそうと努力し続ける)事なので。

尚、柔軟性と筋力がアップしてくると、下の写真の様に "真っ直ぐを通り越して反る事も出来る様になる" とは思うけれど、これは腰と背骨に強い負荷が加わるのでお勧めしません。てか、危ないのでやらないように!

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グキッといっちゃうよ!!


続いて

『両足裏を合わせるバージョン』

やり方や注意点はほぼ前述した『開脚バージョン』に準ずるのだけれど、足裏を揃えている分、股関節に生じるテンションを(足先の回転等で)逃しにくく、という事は『開脚バージョン』よりもより股関節に効く構造となっている。同時に、骨盤も『開脚バージョン』に比べてやや動かし難くなってくるので更なる慎重さを持ってトレーニングに臨んでいただきたい




やり方

・両足裏を合わせた状態で背中を丸め、深く息を吸う

・息を細く吐きながら、ゆっくりと背骨を起こしていく
(その動きの起点は骨盤の回転から)

・背骨が真っ直ぐになった状態で一息吸い

・息を吐きながら、ゆっくりと元に戻す

・以上を3〜5回ほど繰り返す

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背骨を真直ぐに立てるのは『開脚バージョン』と同じ


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反りすぎたら危険なのも同じだよ!!


『開脚バージョン』にも言える事だけれど、背骨を真っ直ぐに立てる事にあまりこだわらないように。しつこいようだけど、このような窮屈な状態で「骨盤・背骨・股関節をコントロールしよう!」と努める事が大切なのであって、例え、見た目で背骨が曲がったままであったとしても、少しでも骨盤や背骨や股関節が動かせるようになったとしたならば十分に成果が上がったという事なのだから

それに、俺だって、ぶっちゃけダンサーさんみたいに柔らかくはないんだもの!脚なんて全然上がらないし(笑)なので、外側の柔らかさと内側の筋肉の柔らかさ、もっと言えば内側をコントロールする神経回路の構築の度合いなんかは一対一で対応はしていないという事なんだよね。なので、「脚がそんなに開かない」とか「背骨を真っ直ぐに出来ない」からといっても直ぐに諦める事の無きよう、丁寧に、根気強くトレーニングを続けて行っていただきたいと願う。


最後に、両バージョンのストレッチに共通する注意点だけれど、股関節の意識はあくまで受け身専門であって、「あー今、内側に捻転してるなぁ・・」とか感じるだけで構わないという事だ。再三「腰と背骨と股関節を『三位一体』で動かす」とは言ってきたものの、『股関節の動き』とは、腰と背骨との関係性の中で、自然に、必然的に決まってくるものであって、意識と動きの中心はあくまで腰=骨盤である事に変わりはないので。


『股関節について』

股関節は骨盤の "寛骨臼(かんこつきゅう)" というくぼみに太腿の骨の "大腿骨頭(だいたいこっとう)" がスッポリはまっている構造をしている(下の写真参照)

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俺の子供の頃からのバイブル『学研まんが・からだのひみつ』のヒトちゃんが、「丁度、ペンさしのようだ」と上手い例えをしているけれど、一般の方達の股関節に対する認識も同じ様なものだと考える。

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↑ ヒトちゃん大好き!


動きのイメージを具現化すると、下のGIF画像の様になるだろう。

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股関節の動きの一般的認識


でね、敢えてショッキングな言い方をさせてもらうなら、股関節にも僅かだけれど隙間(あそび)があって、その範囲内において割と自由に振る舞える(動かせる)ものなのですよ(と言ってもその動きは、前述した通り、『骨盤と背骨との関係性に於いて自ずと定まる』ものだけれど)

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誇張してるからね♡


上のGIF画像では寛骨臼の中で大腿骨頭がグリグリ回っているけれど、それは、いつもの通り誇張してはいるんだけれど、身体がこなれた人達の股関節はこれに近い形でズレ動き続けているんだ。

何故それが必要なのかというと、身体がこなれた人達の骨盤は(この連載でいつも言ってるように)左右に分離して使えるようになっていて、例えばこの連載のゴール『背骨の伸長』に於いては下のGIF画像のように左右に開く動きをしているわけで、そのような場合に、股関節がピッタリとくっ付いていてペンさし様の動きしか出来ないとしたら、その動き(骨盤の変化)がダイレクトに大腿骨に伝わってしまい、両脚でバランスを取るのさえ難しくなってしまうからだ。

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っていうか、股関節がガッチリ固まってしまっていては、そもそも骨盤の分離は起こり得ないのだ。何故なら、骨盤が(その他の骨にも言える事だけれど)変形出来るという事は、身体のどこかにその『変形から生まれる力』を吸収をし、逃してあげられるスペース(あそび)が存在するだからだ。

というわけで、股関節が僅かにズレ動く事によって骨盤の変形から生まれる力を吸収し、この場合(股関節)は特に、大腿骨を通して下肢にその力を伝達し、バランスを保ち、もしくは脚による運動(移動や蹴り等)を引き起こす切っ掛けになってくれるというわけなのだ。


いかがであったろうか?

ご覧いただいた通り、今回ご紹介したダンス・ストレッチは、骨盤の回転のさせ方から背骨の立て方、股関節の在り方までを引っくるめてトレーニング出来る大変優れた方法なわけで、是非ご自身のルーティンワークに取り入れていただきたいものだと思う。但し女性の方達の中には、先天的に股関節が変形されている方や、筋力不足から股関節の靭帯が緩んでいる方もおられると伺っているので、痛みや不調が少しでもある場合は決して無理をなさらずに注意深く取り組んでいただければと思う。


次回、もう少し股関節について解説させていただきますので。


・・・続く

by genshu-juku | 2018-03-24 22:36 | 垂直に伸びる背骨(連載) | Comments(4)

垂直に伸びる背骨_16 骨盤と背骨のストレッチ_③

バランスボール・ストレッチ

操体法の次にご紹介するのがバランスボールを使ってのストレッチ。

特に難しい事もなく、一般的にも知られている事だけれど、これまでお付き合いいただいてる読者の皆さんにはもうお気付きの事と思われるが、『骨盤と背骨がズレ動く』というイメージを併用すればさらにその効果が期待されるというわけだ。

また敢えてその利点を説明させてもらうならば、当たり前だけど『座って行える』という事で(笑)、立つという行為を意識的に訓練している人(舞踏家、武術家 等々)以外の人達は概して外側の筋肉を緊張させている場合が多く(←外側の筋肉に頼っている)、その緊張を取り除かない限りは骨盤の内側の深層筋肉たちは目覚めてくれない(使えるようにならない)わけで・・・でも立って練習しようとすればたちまち外側の筋肉が緊張してしまう・・・というジレンマを一気に解消できるという事だ。

しかもバランスボールなら、後述する "椅子に座った状態" よりも骨盤の移動距離が大きく、よりストレッチ効果が増すという利点もあり、さらに特筆すべきなのは、ボールが転がるのに合わせて骨盤を移動させる感覚が『立った状態で骨盤をズレ動かす』時の感覚に非常に近しいと言う事だ(そのままではないけれど)言葉にすれば『ずるん、ぬるん』といった達人のみが持つ独特の感覚を十二分に楽しんでいただければと思う(笑)

ここでは『前後』・『左右』の二種類のストレッチのみをご紹介しているが、俺はこの他にも前後左右に骨盤をぐるぐる回す『骨盤回し』も好んで行っているので、このページを参考に、各自、お好みのストレッチを工夫されたし。


それでは先ず、操体法でもご紹介した "側屈" から。

骨盤を、ゆっくりと丁寧に、左右に移動させ、それに促される形で(連動して)上体が左右に屈曲するのを感じる(動画参照)


動き出しや動いている最中は『ザックリと骨盤辺り』を意識し、『終末の形=上体を倒し切った状態』で身体の各パーツの重心やテンションを感じる(観じる)のは操体法に同じ。

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筆者は骨盤と背骨をこの様に感じて(観じて)いる
(骨盤と背骨が互いにズレ合っている)


また、バランスボールをお持ちでないという方は、『柔らかめのクッションを置いた椅子』でもある程度の効果は期待できると思うので、是非そちらをお試しいただきたいと思う(「お前のせいでバランスボール買う羽目になったから金寄越せ!」などとは決して言わない様に♡)


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骨盤が動く範囲はボールより狭くなるので その分丁寧に



続いては一般で言うところの『前屈』・『後屈』

決して焦らず、ゆっくりと丁寧に、先ずは骨盤を前後に動かすこ事に意識を集中されたし。それに連なって(あくまで感覚の上で)勝手に上体が、前屈をし、後屈をするのを楽しんでいただきたい。


側屈と同じく、動き出しや動いている最中は『ザックリと骨盤辺り』を意識し、『終末の形=上体が丸まった状態・反った状態』で身体の各パーツの重心やテンションを感じる(観じる)。


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筆者は背骨をこの様に感じて(観じて)いる
(背骨同士が互いにズレ合っている)


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椅子でも応用できるのは上記に同じ


最後に今後の発展について

先にも書いた通り、立つという事を意識的にトレーニングしていない人達は外側の筋肉に頼っている場合が多く、折角バランスボール(若しくは椅子)で得た内側の感覚も立った途端に見失ってしまいがちとなる。そうならない為には日頃から力を抜いて楽に立つという事を意識し、"立つトレーニング" を続けなければならないし(←いずれ ここでもご紹介したい)、そこからご自分が取り組まれる運動(スポーツ、武術、ダンス、音楽?)に応用する為には、その運動で要求される構え(ポーズ)でも力を抜いて立てる様、感覚を丁寧に移行させていかなければならない

取り敢えず、ここでは "操体法" とリンクさせ、バランスボールで得た感覚(意識)を操体法に応用し、さらに操体法で得られた感覚(意識)をバランスボールに適応させるという "上達の正のスパイラル" を構築していっていただきたい。この単純な二つの運動(操体法とバランスボール)をリンクさせる方法論(←自分仕様で導き出した)こそが、いずれ、意識に於いても具体的動作に於いても、ご自分の専門分野に対する "強力な応用力" となってくれるはずなので。


・・・続く

by genshu-juku | 2018-02-05 16:03 | 垂直に伸びる背骨(連載) | Comments(2)