殺陣師の佐藤雅樹が殺陣と武道修行から得た "気付き" を易しく解説します


by Masaki Sato

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伸筋抜骨への道_4 伸筋抜骨式開脚


本連載『伸筋抜骨への道』に関しては、随分長い間ご無沙汰していた気がするが、それも『気と意識のトレーニング』の連載にある程度ケリを付けたいがためであって、今しばらくのご辛抱をお願いしたい所存ではあるけれど、丁度、『気と意識のトレーニング』の方で『丹田呼吸』というものを取り上げたばかりで、しかも、それが今回ご紹介する開脚ストレッチとすこぶる相性が良く、また、それによって開発される内側(筋膜・靭帯)の動きが、『気と意識のトレーニング』の最終ゴールともいえる『小周天』の重要な基礎と成り得ることから、敢えて『気と意識のトレーニング』を一回お休みして『伸筋抜骨への道』を進めることにした次第。

とはいえ、拙ブログの連載内容は全て連環していて、見た目は単なるストレッチでも きちんと気の修行になっていたりもするので、「気を高めるだけの修行をしたい」とお考えの向きにも、是非、このストレッチを試していただきたいと願う。身体中に気を巡らす力が格段にアップすること請け合いなので。また、強さを求める武術修行者の方達にも大いに取り組んでみて欲しいと思っている。一朝一夕では身に付かないとは思うが、このストレッチを真に体現出来た時、貴兄の技の威力は別の次元にシフトするはずなので。


【伸筋抜骨式開脚】



というわけで、これからご紹介するストレッチの概要をざっくりと説明させてもらうと、これは以前、『垂直に伸びる背骨』の連載でご紹介したことのある『ダンス・ストレッチ』〜「開脚をしながら骨盤を丸めたり反ったりする」というもので、この方法によって「骨盤と背骨の関係性」や「骨盤と股関節の関係性」を飛躍的に向上させることが出来る優れものなわけだけれど、今回はその動作に『丹田呼吸』を加え(※)、敢えて強い腹圧を掛けることによって、主に股関節から足先までの『伸筋抜骨』を誘発させようとする狙いがあるわけで、カッコいい言い方をさせてもらうなら「脚を目覚めさせる鍛錬法」ということにもなるだろう。

(※)強い腹圧を掛けることが目的なので『逆腹式呼吸』でも もちろん同じ効果が得られるのだが、「腰を丸める~反る」というこのストレッチの動作が『丹田呼吸・裏』の動きと全く同じであり、今回の『伸筋抜骨式開脚』を練ることによって『丹田呼吸』にも習熟することが出来ることから『逆腹式呼吸』よりも『丹田呼吸』の方を採用した次第。

尚、本記事においては、前述した『ダンス・ストレッチ』と『丹田呼吸』の情報を元に話を進めているので、まだお読みでないという方は、ご面倒でも、そちらの方も当たっていただけたらと思う。本記事の理解が格段に進まれるはずなので。



【やり方】

・ご自分の股関節の許容範囲で開脚をする
伸筋抜骨への道_4 伸筋抜骨式開脚_f0074992_16475174.jpeg

・背中を丸めながら深く息を吸う
(腹を膨らませながら、3秒ほどかけて)
伸筋抜骨への道_4 伸筋抜骨式開脚_f0074992_16475233.jpeg
・息を細く吐きながら、ゆっくりと骨盤を立てていく
(腹を膨らませながら、5秒ほどかけて)
伸筋抜骨への道_4 伸筋抜骨式開脚_f0074992_16475293.jpeg

(その際、なるべく背骨も真っ直ぐになるように)
伸筋抜骨への道_4 伸筋抜骨式開脚_f0074992_17465317.jpeg

・骨盤を立てていくタイミングで爪先を上に向けていく(※)
伸筋抜骨への道_4 伸筋抜骨式開脚_f0074992_16480092.jpeg

・以上を3〜5回ほど繰り返す

(※)両脚の『伸筋抜骨』が出来てくると、自分の「動かそう」という意識が無くとも、爪先は勝手に上を向く(足首が曲がる)ようになる。これは骨盤の内側で発生させた伸びようとする力(張力)が足先にまで伝わってきた証でもあるのだが、初心の内は、ある種の「型」としてご理解いただき、ご自分の意思で爪先を上に向けてもらいたい。


【呼吸の要点について】

・吸う時は鼻から

・吐く時は 鼻か 口から
(勢いよく吐けば自ずと口から出て行く)

・全身、特に内臓・骨盤周りをリラックスさせて

・呼吸と動作を一致させる

・呼吸(と動作)の狭間(吸息と呼息、呼息と吸息の間)は2秒ほど息を止める
(息む必要はない。リラックスして自然な形で)

また、特に注意点を挙げさせてもらうなら、過度に強い呼吸は厳に慎んでいただきたい。では「過度に強い呼吸」とはどれほどのものかというと、便秘の時にトイレで最大限 "息む" 時のそれだと思ってもらえればよろしく、目は赤く充血し、頭には血が上り、心臓がドクンドクンいうあの感じだといえばおわかりかと思うが、そのような呼吸がいかに身体に害をなすかは容易に想像していただけるかとは思う。

とはいえ、この連載の一回目『概要』でもお話した通り、強い腹圧が『伸筋抜骨』を生み出す原動力であることに変わりはなく、また、今回ご紹介している開脚ストレッチにおいても「腹を膨らませながら息を吐く」段階においては相当の腹圧が掛かっているには違いないのだが、それでは、安全にこの運動を遂行するための呼吸の強さは?といえば、先ず「息を止めない」=「息まない」ということが挙げられるだろう。必ず、口か鼻から、細くて良いので息を吐き続けるということを心掛けていただきたい

次に、目が眼圧でパンパンになったり、頭に血が上ってクラクラしない程度の腹圧に抑えるということ。ここまで無理をしなくとも、サッカーボールに空気が入っているような腹の硬さ(内側からの圧力)は容易に生み出せるはずなので、それを原資として『伸筋抜骨』を発展させていっていただきたい。コツは、とにかく全身の、筋肉という筋肉、靭帯という靭帯を出来るだけ緩ませるということ。そうなればなるほど、弱い腹圧でも身体の隅々にまで伸筋抜骨を張り巡らすことが可能となるので。


【呼吸のイメージ】
本運動では、呼吸と動作に合わせてイメージ(意念)も持っていただきたい。

先ずは、鼻から息を吸いながら下腹のボールに溜めるイメージ
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そうして、下腹のボールを膨らませ続けながら、足の裏の "湧泉穴" から息を吐くイメージだ。
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これらのイメージを持ちながら行うことにより、本運動は真の効果を発揮することとなる。このブログの随所でも語っている通り、強いイメージ(意念)こそが身体の深部に対する最も手堅いアプローチ方法となるので。


【股関節について】
ここで、股関節について改めて説明させてもらうと、その仕組みに関して、一般の方達は下のGIF画像のような、股関節を支点とした "ペン差し" 様の構造と動きを連想されるとは思うが、武道や舞踊などで十分身体がこなれた者の股関節には、僅かではあるけれど遊びがあり、その空間の中では割と自由に動かすことが出来るのだ(次のGIF画像参照)
伸筋抜骨への道_4 伸筋抜骨式開脚_f0074992_16525577.gif
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そうして、両脚に自在に『伸筋抜骨』がかけられるようになってくると、今度は下のGIF画像の様に、大腿骨が股関節から抜けるような力(張力)が働き、延いては、膝関節、足首関節、足の指のそれぞれの関節までもが引き抜かれる方向に伸長していくものなのだ
伸筋抜骨への道_4 伸筋抜骨式開脚_f0074992_16363203.gif
もちろん、誇張してるよ〜!

これを蹴りに応用すれば、相手に接触したところから蹴ることが出来る、所謂 "蹴りの寸勁" が可能となるし、膝を抜いて全体重を床に落とすことが出来れば(沈墜勁=ちんついけい)、そこから生じる抗力(反発力)を上体に向けて伝搬する重要な回路の一部分とすることが出来る。

但し、注意していただきたいのは、180度開脚が出来るほどの柔軟性はここでは求めていないということ。

それよりも大切なことは、身体のより内側で各部の靱帯と筋膜が繋がることであって、表向きの柔軟性はさほど関係がないということだ。もちろん、柔軟であるに越したことはないが、内側の繋がりを無視した柔軟性では片手落ちだということをよくよくご理解いただきたい。また、ここで求められている柔軟性とは、一言でいうなら骨盤の内側のそれであって、骨盤の内側を手っ取り早く柔らかくするためには腹式呼吸をより深く出来るようになることが必須であることも頭の片隅に入れておいていただきたい。


【個人差について】
最後に、本運動の上達途中において、表に出てくる現象(動き)が個人によって違いがあるであろうことを予言しておこう(笑)

それは「息を吐きながら骨盤を立てていく過程で爪先が上を向く」という事象に関してなのだが、人によっては「爪先が伸びていく人」、言葉を替えれば「足の甲が伸びていく人」もいるだろうということ。

これ、何のことはない、筆者の経験から話していることなのだけれど、未だ筆者の腰が固く、開脚をすると僅かに腰が丸まっていた時期には(←それでも伸筋抜骨は足まで届いていた)爪先がキューっと伸びていったものなのだが、その後の鍛錬で更に腰が柔らかくなり、開脚をしながらでも骨盤を立てられるようになると、今度は、手の平を返すように、爪先が上を向くようになってしまったのだ(笑)
伸筋抜骨への道_4 伸筋抜骨式開脚_f0074992_16480769.jpeg
伸筋抜骨への道_4 伸筋抜骨式開脚_f0074992_17465674.jpeg

なので、一応、手順としては本運動を行いながら「爪先を上に向ける」よう指導させてもらってはいるけれど、『伸筋抜骨』が足先まで通っていく過程で「爪先が伸びる人」も出てくるだろうはずで、もしそうなっちゃったとしても「あれ?俺、間違ってるのかな?」と、不安に思わなくとも大丈夫ですよといいたいわけ♡

では、何故、このような違いが生じるのかというと、あくまで筆者の体感によるけれど、腰を丸めている時と立てている時とでは腰腹から伝わる張力の経路に違いがあるからだ。丸めている時は脚の前面の筋(すじ)がより伸び、立てている時は裏側の筋が伸びるからだろうと考えている(中国武術にいうところの "勁道" に関係があり)

なので「爪先が上を向く」のでも「爪先が伸びる」のでも、どちらも『伸筋抜骨』が通っていることには変わりはなく、それがその人の個性ともいえるわけで、例えば武術的にいえば「外股(の構え)が得意」か「内股が得意」かという話にも通じるところで、各自が得意とする方向を存分に伸ばしていかれることがベストだと考えている。

この辺りの感覚は読者諸兄への宿題とさせてもらうので、それぞれがご自身の感覚を切り拓く中で見つけてもらえればと思う。


【後書き】
というわけで、久しぶりの『伸筋抜骨』の記事ではあったけれど、書いていて(CGを作っていて)本当に楽しかった!自分の身体の内側で感じていることを表現するのって、もどかしくもあるけれど、「もしかしてそれを理解してくれる人がいるかもしれない」と思うだけでなんとも言えない高揚感が湧いてくる。裏を返せば、それだけ孤独を感じているということかもしれないな。だって、普通の、何も運動をしていない人達に向かって今回のような話を得意になってしたところで、「ハア?」って不思議顔されるだけだもんねえ?

うん、寂しいんだよ、自分(笑)

このまま、自分が辿り着いた境地を誰にも手渡さずにこの世を去るのってとてつもなく寂しいと感じている。だからこそ、必死になって情報を発信して仲間を増やしたいんだろうな、とも。

というわけで、今回も頑張って作りました。
皆さんの、何かしらからの、参考にしていただければ幸いです。


・・・続く

by genshu-juku | 2022-11-24 19:00 | 伸筋抜骨への道(連載) | Comments(0)