殺陣師の佐藤雅樹が殺陣と武道修行から得た "気付き" を易しく解説します


by Masaki Sato

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伸筋抜骨への道_1 概要

さてさて、いきなりの新連載『伸筋抜骨(しんきんばっこつ)への道』でございます。

まだ『気と意識のトレーニング』が始まったばかりだというのにせっかちな奴だなあと思われるかもしれないけど、『気と意識のトレーニング』の成果を正しく受け取るためには、これからご紹介する『伸筋抜骨』という事象への理解とその感覚を得るための実践が不可欠と考えているので、勇み足を覚悟で連載に踏み切った次第です。


【伸筋抜骨】

『伸筋抜骨』とは中国武術の用語で、広い意味では単に "ストレッチ" のことを指すのだけれど、狭い意味では "極意的な身体の状態" を指していると筆者は考えていて、その状態に至ると全身の関節という関節が引き延ばされるように感じられ、文字通り "骨が抜けるような感覚" を覚えるわけなのだけれど("骨が開く" と例える方もおられる)それは背骨から始まって四肢の関節にまで及び、終いには手足の指の関節にまで伝わるわけで、疑似的にその感覚を体験してみたいのならば、先ず仰向けに横になって両足と頭を逆方向に引っ張ってもらい、その状態で横方向に(十字に)開いた両腕の両手の指先10本をそれぞれ腕の向かう方向に引っ張ってもらうという非常に馬鹿げた試みをすればよいのだが(危ないから絶対に真似しないでね!)スポーツや武道を長年修行されている方達でさえもにわかには信じがたい運動ではなかろうかと思う。

『伸筋抜骨』動画
誇張してるよ!もちろん(笑)


【その仕組み】

それでは、そのような摩訶不思議な運動がどのようにして起こっているのか説明すると、その原動力となるものは拙ブログの他の連載『垂直に伸びる背骨』でもお馴染みの『背骨の伸長』であり、強烈な腹式呼吸(逆複式、正腹式のどちらでも)によって骨盤内の深層筋群が内側から押し広げられ、その "伸びようとする力" が背骨 1個1個を垂直方向に押し上げて行こうとする、正にその『張力』が四肢に伝わり、手足の指先にまで伝わるということなのだ。

そしてその『張力』を伝える媒体となるのが、腱や靭帯をも含めた『筋膜の総合ネットワーク』であるということなのだ。

筋膜とは最近は『筋膜リリース』という言葉も巷に溢れていて一度は耳にした方もおられるとは思うけれど、一言でいえば筋肉を包む薄い膜のことであり、そして全ての筋肉はその膜に覆われていて、筋肉がスムーズに伸展するということは隣り合う筋肉と筋肉の膜同士が、ヌルヌル、スルスルと滑り合うからであって(※)また、隣接する筋膜同士は互いに連携し合ってもいて、観察の眼を全身に向けるなら、全身は筋膜のネットワークで覆われているといっても過言ではなく、ホリスティックに身体を観察する者には必要不可欠の視点となっている。

(※)例えばコリや痛みなどのように筋肉が上手く動かせなくなるという背景には、この、筋肉と膜、もしくは膜同士の癒着があるからだといわれている(それらを剥がして滑らかな状態に戻してあげるのが筋膜リリース)

要約すると、『伸筋抜骨』とは腹式呼吸によって身体の深部に生み出された "伸びようとする力"=『張力』が背骨を伝わり(脚へは股関節から直接伝わって)四肢、延いては手足の指の関節までをも引き伸ばす状態のことを指すのである。

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腹圧による張力が背骨を駆け上がる

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張力が肩甲骨を押し広げ腕に伝わる

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腕に伝わった張力は指先にまで及ぶ


【本当にそんなことが出来るのか?】

「まあ、いろいろ屁理屈はこねてるけど、結局、それって古武術によくある迷信みたいなもので、ぶっちゃけ体現することなんて出来ないんでしょ?」って思われる方も多いとは思う。そういう方達には先ず下のダンス動画をご覧いただくとしよう。


いかがであろか?人の身体というものは、かくも精緻に、かくも滑らかに連動するものだということに驚かれたのではないだろうか?

これは "Poppin(ポッピン)" というダンスで、パントマイムにも通ずる身体操法、特に "体中の関節を波のように使う技法" に長けているものなのだけれど、筆者はこのダンスに兄弟のような親近感を抱いていて、何故なら『伸筋抜骨』を体現する者の内側を駆け巡っているのもこれとほぼ同じ "波の動き" に他ならないからだ。

但し、『伸筋抜骨』と "Poppin" ではその見た目に大きな隔たりがあるため、これら二つが、実は身体の内面ではとても似通った運動をしているとは一般の方達にはとても想像が付かないこととは思う。そう、 "Poppin" は分かり易く "なみなみ動く" けれど(笑)『伸筋抜骨』はただ突っ立ったまま、外見にはほとんど動いていないように見えるからだ(!)

この違いはどこからくるのかというと、"Poppin" のダンサーが主に手足の末端から波の動きを始めるのに対して(もちろん、体幹の胸や腰から始まる場合もあるけれど)『伸筋抜骨』は身体の奥の奥、腹腔と骨盤の内側からその運動が始まるからだ。また "Poppin" は見せるための動きなのだから、当然、大きく分かり易く "波" を動かすけれど、『伸筋抜骨』は、特に武術に用いる場合などは、外側にその動きが見えなければ見えないほど良いわけで(相手に読まれない)畢竟、動きが少ない方向に進化して来たというわけだ。

ここで一つ断っておかなくてはならないのだが、『伸筋抜骨』は表面的に動かないことを強調してはいるけれど、それはあくまで鍛錬法のうちであって、いざ武術に応用する段になれば、それぞれの流派独特の動きで肚(丹田)から生まれた張力を四肢に伝えるものなのだ(太極拳なんかがそうだよね)では、何故筆者が身体を動かさないことを前面に押し出すのかというと、その方が秘伝めいててカッコよさそうだから(笑)後は、上達の階梯において身体をむやみに動かしてしまうと "出来た気" になって本質を見誤ってしまうからだ(※)

(※)矛盾するようだけれど、武術の初心のうちは身体を大きく動かして筋肉や筋(すじ)を、強く、柔軟にしておく必要がある。

まあ、どれだけ言葉を尽くしたところで体験に勝るものはないので次から具体的な鍛錬法を説明するとしよう。


【鍛錬法】

1.逆腹式呼吸を伴ったストレッチ
前述したように『伸筋抜骨』の原理とは腹式呼吸によって生まれた『張力』を全身に伝えることであり、その鍛錬方法も腹式呼吸を用いたものであろうことは容易に想像がつくと思う。やり方はいたって簡単で、腹式呼吸の中でもより強力な腹圧を生み出せる『逆腹式呼吸』で息をしながら(※)各種ストレッチを行うというものだ。「そんな単純なことでいいの?」と驚かれるかもしれないけど「いいんです!それで!!」但し、そんな単純なことを何千回何万回繰り返す根気があるのか?という話ではあるけれど。

(※)一部、通常の腹式呼吸がマッチする場合もあり。

逆腹式呼吸は、息を吸う時に腹が凹み、吐く時に膨らむ

この連載では筆者がこれまで取り組んできたストレッチの中で(ヨガやダンスのものも含む)最も効果を感じ、今でも毎日行っているものをご紹介して行けたらと思っている。特に最初のうちは脚と腰に関するものを重点的にご紹介し、他の連載『気と意識のトレーニング』の中核でもある『下丹田』の養成にも拍車をかけられればと思っている。拙ブログの三つの連載『垂直に伸びる背骨』・『気と意識のトレーニング』そしてこの『伸筋抜骨への道』はそれぞれが連環していてどれか一つを伸ばすと他の二つにも好影響を与えるという構造になっているので(← なんというエレガントさ!!)

なんて大袈裟なこと言っちゃってるけど、運動をしてる人なら毎日ストレッチはしてるはずなので、そのストレッチにほんの少し呼吸と姿勢に対する意識を加えるだけでその効果が何倍にも上がるって話なんですよ(笑)なので、あまり深刻に捉えずに、気楽に取り組んでいただければと思います。

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呼吸によって普段のストレッチの "質" が変わる


2.站椿功(たんとうこう)
『気と意識のトレーニング』でお馴染みの『站椿功』も、実は『伸筋抜骨』の養成には欠かせない鍛錬法の一つといえる。下腹の前にビーチボールを抱えるような構えを取ってじっと立ってるようにしか見えないけれど、頭の中では明確なイメージ(意念)を用いて "脳内マップ上の身体" に『丹田』というボール状の形を、あたかも物理的な身体にもそれが存在しているかのように形成していくという作業なのだけれど、それが何の役に立つのかというと、"脳内マップ上の身体" に "ある形" が形成された場合、その場所と形に対応する深層筋群の諸機能が統合され、正にその形を持った "運動器官" として機能するということなわけで、例えば下腹の中にボール状のモノが意識的に形作られた場合(これを『下丹田』という)腹腔を構成する深層筋たちが連携し合って "球形の一つの運動器官" として振る舞い始めるということなのだ。

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一つの "運動器官" として機能する

ということは『伸筋抜骨』の養成の為には身体中の関節という関節を繋ぐための(そのように機能させるための)イメージ(形)が必要なわけで、それはどのようなものかといえば『身体中の関節という関節が繋がっている』というイメージなわけで(まんまやんけ!)要するに "線" で繋げばいいわけなんですよ、各関節を(笑)ま、これはその時になったらより詳しく説明するけれど、単純に線で繋ぐよりも、要所要所の大きな関節(足首とか膝とか)をより強く意識しながら、そこを中継点として繋いで行くというやり方があり、また、古くから東洋の武術で言われているように「足の裏から息(水でもよい)を吸い上げ、両手の指先から吐く」といったイメージも非常に有効といえるだろう。

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足裏から水を吸って掌から吐くイメージ

あと、これもその時になったら改めて説明させてもらうけど、『站椿功』で『伸筋抜骨』を練る際の呼吸はできるだけ『逆腹式呼吸』で行っていただきたいのだ。「あれ?站椿功の呼吸は自然呼吸じゃなかったっけ?」と思われる方もいらっしゃるかもしれないけど、正にその通りで、過度な呼吸で『偏差(心身の不調)』を被らないためにも、意識がある種の瞑想状態にシフトする『站椿功』では「呼吸はあくまで自然にね!!」って、口を酸っぱくしてお願いして来たわけだけれど、その禁を破ってでも逆腹式呼吸をお勧めする理由があって、それは、その方が明らかに効果が上がるから。何故なら、『伸筋抜骨』のメカニズムは上述したように、腹式呼吸、特に『逆腹式呼吸』から生まれる腹圧がその運動の発生源となっているため、イメージ(意念)に実際の身体内の動きを加えてあげた方が、"脳内マップ上の身体" と "物理的な身体" をリンクさせ易いということなのだ。但し、『伸筋抜骨を練る站椿功』も『站椿功』には変わりがなく、過度な呼吸が偏差を引き起こす危険をはらんでいるのは『気を練る站椿功』と全く同じなので、初心の方達に『伸筋抜骨を練る站椿功』をご紹介するのは時期尚早と考えていて、いずれ『気と意識のトレーニング』が一区切りを迎えてから、読者諸兄のイメージ力と精神力が過度な呼吸に耐えられるくらいに強くなられた頃を見計らってご紹介出来ればと考えている。

なので、しばらくの間は『逆腹式呼吸を伴ったストレッチ』の紹介に留めさせていただくので、その間に『気と意識のトレーニング』と『垂直に伸びる背骨』のトレーニングを進めておいていただければと願う。


【何に役立つのか?】

ここまで筆者が熱く語ってきた『伸筋抜骨』ではあるけれど、ではそれを身に付けることが出来たとして一体どのような利点があるというのだろうか?

武術的にいえば、打撃に勢いを乗せるための距離が全く必要ないため(実は身体の奥の奥から運動が伝わってくるので厳密にいえば十分に距離を経てはいるのだけれど)相手の身体に自分の拳や掌を当てたところから強烈な打撃を食らわせることが出来る、いわゆる『寸勁』や『零勁』といった技が可能となる。残念ながら筆者はこれを身に付けるのに三十年以上も掛かってしまったため、本来の武術的な用法としてこれを使う機会など、この先一生無いとは思うけれど( ←そもそも "組み手" をしなければ、実践で使うことなど到底無理な話だからね)

#組み手をする友達がいない

また、『伸筋抜骨』の応用範囲は武術に留まらず、全ての身体文化、肉体労働にまで及ぶと感じていて、肚(丹田)から生まれた張力が四肢の隅々にまで行き渡っている時、それを体現する者の主観としては、胴体、両腕、両脚それぞれに太い "針金" が通っているような(もちろん、それぞれの指先にまでも)そして、それらが全て繋がっているような感じを得るものなのだが( ← 全身の『靱帯と筋膜の張力ネットワーク』がリンクされた状態)この状態を保ちながら動くことが出来れば、ジャンプをすれば身体の芯にバネが入っているかの如く軽々飛べるし、重い物を持てば、その重量は全身の "針金" に分散され、表面の筋肉を固めて持つ時よりも楽に持つことが出来るようになるのだ。ここで思い出していただきたいのは、昔の日本では『筋金入り(すじがねいり)』という言葉が有って、他人より力がある人、他人の何倍も労働力がある人、要するに他人より運動能力が秀でた人物を称して「あいつは筋金入りだ!」と言ってたらしいのだけれど、『伸筋抜骨』の境地に立って(身体の芯に "針金" を感じて)思うことは、「筋金」ってこのことを指してたのねってことだ。

これは他の連載(『垂直に伸びる背骨』)にも紹介したエピソードだけれど、二十代の前半、まだまだ筋肉ムキムキだった頃、設備の現場で一緒になった、初老の、しかも体格は痩せてて骨と皮だけの先輩設備マンが、俺が渾身の力を込めても回せなかったボイラーの蒸気バルブ(←でっかいヤツ)をただの一踏ん張りで開けてしまったのには驚かされた。きっとあれが「筋金が入った」状態だったのだろうと思う。

で、以上の文脈でいうならば、『伸筋抜骨』とは日本では『筋金』という言葉でいわれていたように、中国武術の専売特許ではなかったという話なんだよね(残念ながら)ならば "東洋の身体的叡智" であって、やっぱ東洋スゲえ!って話にもって行きたいところだけれど、幸いにも若い頃にダンスやパントマイムに触れることが出来た身としては、それらの鍛錬法の中にも明らかに『伸筋抜骨』を練る方法が存在するのを知っているので、ここはやはり、世界全体の、『人類の宝』ということで話を綺麗にまとめておきたい(笑)

というわけで、武術、芸術、スポーツ、全ての身体的運動に応用可能な『伸筋抜骨』ではあるけれど、ここで声を大にして言いたいことは、やはり健康に対する貢献度についてだろう。武術の技のように急激な勢いをつけてこれをやった場合、身体の何処かに力みがあったりするとそこで波の運動エネルギー(張力)がストップされてしまい、衝撃となってその場所の筋(すじ)や筋肉を傷めてしまう。ってか、そもそもそれだけの運動エネルギーを身体の奥底から生み出すためには一瞬で爆発させるような呼吸が必要になるのだけれど、やり過ぎれば当然その周辺の深層筋を傷つけてしまうし、下手をすれば内蔵をも破壊してしまうかもしれないのだ(要するに武術の技というものは "諸刃の刃" ということなのだけれど)しかし、それとは逆に、ゆっくりと丁寧に行うことが出来さえすれば、腕の良いマッサージ師に寄ってたかって全身を揉みほぐされるような極上の気持ちよさを味わえるということにもなるのだ。何しろ筋膜という筋膜はリリースされ、毛細血管の隅々にまで血液が行き渡るのだから、ものの五分もやらない内に身体中がポカポカ暖かくなってくる。あくまで健康維持という目的だけなら、家の中にいたまま、場所もほとんど取らずに、何より僅かな時間で事足りるというのだから、これからの高齢化社会においてこれ程頼もしい健康法も他にはないのではないかと思っている(※)

(※)但し、習得するまでにはある程度の年数が必要なので、せっかちな人には向かないんだけどね~(汗)


【ゆるんでこそ】

前述したように、武術的な速さで『伸筋抜骨』を行う場合(←これは既に "身体の使い方" ではなく "技" そのものなんだけれど)身体の何処かに緊張があれば、そこで流れが止まってしまい、全ての圧力がそこに集中して筋組織を破壊してしまう(丁度、水が出てるホースを踏みつけたみたいに)これは健康目的で緩やかに行う場合も全く一緒で、筋肉に力みがあればせっかくの『張力』も行く手を阻まれ、その先へは届かなくなってしまう。故に、『伸筋抜骨』を身に着けるためには全身をゆるゆるに緩めることが前提条件となるのだが、別の言い方をすれば、身体の中芯(肚・丹田)から生み出した『張力』を先へ先へと送り出す際に、その障壁と成り得る各部の緊張を一つ一つ解きほぐしていくことこそが『伸筋抜骨』の鍛錬そのものだということにもなる。

これは余談だけれど、筆者は『伸筋抜骨』を会得するのに三十年以上もかかってしまったと書いたけれど、それは二十代の初めまでにガッチガチに全身の筋肉を固め尽くしてしまったことと、無茶苦茶な身体の使い方をして(アクション俳優というものをやってますた)背骨にいくつもの酷いズレを抱えてしまったためで、先ず最初の十年で筋肉を緩めることを学び、その後の二十年をかけて背骨のズレを根気よく直して来たからに他ならないのだ(←『背骨の伸張』を使って、自力で)

でもね、自分達の頃とは時代も随分変わって来てて、あんだけ全身に力を入れ、気合で変身してた仮面ライダー達も、今は "JoJo 立ち" よろしく、ユルン、タルンと構え、小声で「変身」って呟くだけになっちゃってて(笑)時代そのものが "気合と根性" から "優しさと共感" にシフトしている今、若者達を見ててもゴリゴリのマッチョはあんまり見かけなくて(※)細身で、一見 "なよ" っとしてる男の子達をよく見かけるようになったけれど、どっこい彼らの身体能力といったら、自分が昔かじったアクロバットだけを見ても、その時代には見たこともない大技をいとも簡単そうにやってのけている("トリッキング" や "パルクール" で検索してみてね♡)既に彼らは『筋金』で動けているに違いないのだが、そんな彼らがそのトレーニングの一環として『伸筋抜骨』を取り入れてくれたなら一体どんなレベルに到達するのだろうか? いや、そのような身体エリート達だけではなく、普通に日常を暮らす若者達が『伸筋抜骨』トレーニングを行ってくれる事をこそ俺は願っているのだが、彼らのように無駄な力みもなく、しかも子供の頃から授業でダンスに触れてきた(ということはウェーブ様の動きにも慣れている)身体には、『伸筋抜骨』は素直に馴染んでくれるのではないかと思っているのだ。もちろん、昔の俺みたくガチガチに固まってるわけじゃなくって、スタートから緩んでるわけだから、その習得に三十年なんて掛かるわけもなく、早い人で十年?いや、もしかしたら四~五年でモノにしちゃう人も出てきちゃうかもしれないYo〜!

(※)なにもマッチョな人達を否定してるわけじゃないからね~。丸太のような腕をしてたってフワフワの筋肉をしてる人は一杯いるんだもの。ただ、ガチガチに固めていては『伸筋抜骨』を習得するのには骨が折れるよ、と言いたいだけなのよね。

日本の第一人者 "ZEN" 氏のパルクール

もちろん、おじさん世代にもまだまだ頑張ってもらわなくては(笑)今更「力を抜く」とか、かったるいだろうけれど、歳を取っても、身軽な、健康な身体でいたかったら、直ぐに取り組まない手はないと思うんだけどね。身体のモデルチェンジは今からだって全然間に合うんだから、どうせ生きるなら、死ぬまで現役! "元気溌剌オロナミンC" でいたいじゃんねえ?!

こうして老いも若きも、こぞって『伸筋抜骨』のトレーニングに励んでもらえたなら、あと十年、二十年もしたら日本中が『伸筋抜骨』を体現する人で溢れかえっちゃうんじゃないのかな? これこそが筆者の壮大なる夢ではあるんだけれど、それって前述したように、実は昔の日本人に先祖返りするだけだったりするんだよね~。幕末に来日した外国人らが驚いたように、昔の日本人は、身体はちっちゃくて線は細かったのに、身体の大きな西洋人にも劣らぬ労働力を発揮出来たというのだ( "飛脚" の話は有名だよね)そのように、表向きはたおやかで、でもその芯には針金のような強靱さを併せ持つ "真の日本人" がこれからどんどん生まれることを、そしてそんな若者達がどんどん新しい時代を切り拓いて行く姿を、老後の楽しみに待っていようと思う♡


【関連する鍛錬法】

1. 垂直に伸びる背骨
筆者が太極拳の修行でたどり着いた境地。実は全ての身体文化に通底する極意でもある。『正しい腹圧によって腰腹(ようふく)内の深層筋群が引き伸ばされ、そこから生まれた "張力" が背骨を上下に伸展させる』という状態。この状態に身を置けば頭蓋骨と脊柱管を満たす髄液が強制的に循環され、脳を若々しく保つことが出来るとされている。

他の連載『気と意識のトレーニング』においては基本中の基本とされており、且つ極意ともなっている。『垂直に伸びる背骨』の中で示したトレーニング方法はそっくりそのまま本連載『伸筋抜骨への道』の良質の基礎とすることが出来るので、興味を持たれたに方は、是非、並行して取り組んでいただければと願う。

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基本且つ極意でもある『背骨の伸張』


2. 気と意識のトレーニング
気の主な通り道に『経絡(けいらく)』というものがあって、全身に隅なく張り巡らされてはそれぞれに対応する臓器とリンクしているのだけれど、『伸筋抜骨』と『経絡』には表裏の関係があって、全身の『伸筋抜骨』が進めば、それだけ各『経絡』の通りも良くなり、引いては "気の流れ" も向上するという構造になっている。逆もまた真なりで、意識的に『経絡』に気を巡らそうとすることは、結果的に『伸筋抜骨』を引き出すことにも繋がっている。気を体感する者としては、「気だけ」、「張力(伸筋抜骨)だけ」という区別はなく、ある部分に気を流せば、正に同じ場所の靱帯と筋膜が伸びているのを感じられるわけで、実はどちらも同じことをしているのだということに気付かされる。

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代表的な経絡の『任脈』と『督脈』

というわけで、『垂直に伸びる背骨』と同じく、『気と意識のトレーニング』は『伸筋抜骨』を向上させるのに不可欠の鍛錬法となっておりますので、興味に併せて随時こちらも当たっていただきますように。


3. 呼吸法
呼吸法は拙ブログの全ての連載に通底する基本事項です。
本連載『伸筋抜骨への道』をお読みになる前に、是非とも下にリンクしたページの情報を基に、呼吸法へのご理解を深めていただければと思います。



4. ゆる体操
運動科学者の高岡英夫氏が考案した健康体操。見た目の "適当さ"(笑)からは想像も出来ないほどの深いリラックス効果をもたらす。割と静的な印象の『伸筋抜骨』の鍛錬法に比べ、動きはダイナミックで分かり易く、短期間で身体をゆるめることができ、また『伸筋抜骨』の基礎とも成り得る。本連載をお読みの方には是非取り組んでいただきたい体操ではある。

筆者お勧めの『ゆる体操』は次の通り(リンクはいずれも公式無料動画)

全ての基礎として(超お勧め!)

背骨、肋骨、骨盤の各深層筋群に

特に骨盤の深層筋群に

呼吸の基礎として(是非やっといて!!)


【後書き】

あ〜あ、とうとう始まっちゃったよ、この連載(笑)

勘の良い方はもうお気付きのように、『伸筋抜骨』は『背骨の伸張』の延長線上にある事象です。なので『垂直に伸びる背骨』の連載開始当初から、いや、そのずぅ〜っと前から『伸筋抜骨』を世に広めることは考え続けて来ました。けれど、いかんせん、それを分かり易く説明するための言語的表現と視覚的表現(CG)の、スキル、実力に乏しかったため、それらを獲得するのにこんなにも時間が掛かってしまったということです(優に十年以上!)

何が難しかったかといいますと、最初にお見せした関節がぐにょ〜んと伸びる動画(CG)と『伸筋抜骨』とは何ぞや?と仕組みを語るくだり。身体では出来ているのに、それを言語化すること、視覚化することにはとてつもない難しさを感じ続けて来ました。そんなこんなでようやく具現化できたこのページ、このたった1ページが『伸筋抜骨』の全てを物語っているということです。『伸筋抜骨』の肝といっても良いでしょう。だって、後に続く実践法なんて「はい、今日は逆腹式呼吸をしながらこのストレッチをしましょうね♡」っていうだけなんだもの(笑)

というわけで、自分が精魂込めて作成したこのページ、末永くご愛読いただけることを心から望んでいます。そうして、この連載を通して(もちろん、他の二つも併せて)皆さんの身体が新しく生まれ変わって行かれることも。

これからも分かり易い記事を目指して精進しますので
今後ともご愛読の程よろしくお願いしますね〜 (*^_^*)


・・・続く

by genshu-juku | 2020-08-09 17:28 | 伸筋抜骨への道(連載) | Comments(8)
Commented by YK at 2020-08-21 18:25 x
新シリーズ開始、ありがとうございます!
何度熟読しても新たな発見がある……本当に奥の深い記事です。いつもながら掲載ありがとうございます!
Commented at 2020-08-21 18:30 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by genshu-juku at 2020-08-22 15:11
今回もまた熱いご感想をくださり、誠にありがとうございます。

渾身の記事も、FaceBook 等、SNS での反応は甚だ芳しくなく、「あ~もうダメだ!俺のいうことなんかにゃだれも耳をかしちゃくれないんだ~!!」ってふてくされていたところです(笑)YK さんが評価してくださったお陰でようやく気持ちを持ち直すことができました(← 単純)

(非公開コメントの方で)拙ブログの三連載を『一大巨編』と仰ってくださり、また司馬遼太郎の長編小説にもなぞらえてくださった事、本来の奥ゆかしい日本人なら「いえいえ、私ごときが・・」なんて遠慮したりするのでしょうが・・・僕は違います。

めちゃくちゃうれしいで~す!!!(← 大文字にできないのが残念!)

後、お察しの通り、『伸筋抜骨』の上達には "ゆるむこと" と "呼吸" が最重要のポイントとなってきます。もちろん一朝一夕で身に付くものではありませんが、以前いただいたコメントに「ゆる体操のねばねば歩きをしている時に足裏からのモゾモゾ(張力)が頭頂まで抜けていった」と書かれていましたので、その体感を基にすれば、ご自分でも驚かれるほどすんなりと全身に『筋金』を巡らすことが出来るはずです。

・・・続きます
Commented by genshu-juku at 2020-08-22 15:15
今では偉そうな顔をしてる僕ですが、初めて『伸筋抜骨』の "芽" を感じたのは、三十年前に三個くらいの腰椎が呼吸に合わせてぐにょぐにょ伸び縮みしているのに気付いた時でした。そうです、その時は背骨三つしか意識するが出来なかったのです!でも、その三個のぐにょぐにょを片時も忘れず、一日に一ミリ、二ミリのレベルで少しずつ意識出来る範囲を広げ、繋げていったからこそ今日があるのです(プチ自慢しちゃいました / 汗)

それに比べて YK さんは既に背骨全体と足裏からのリンクはお出来になっております。これがどれだけ素晴らしいことかは私が一番存じ上げています。『靭帯と筋膜のネットワーク』の脚へのリンクはこれから本編でご紹介するストレッチが有効に働いてくれると思いますし、腕へのリンクは、これは予告になりますが、『背骨の首と背中の境目辺り』(中医学では大椎というツボですが)が非常に重要な分岐点となりますので、ご自分で『背骨の伸長』をやられる際には特にこの辺りの椎間板を伸ばしてあげるよう心掛けてみてください(決して外力に頼らず、ご自分の張力を使って、ということです)もしかしたら私の連載を待たずとも、腕や手に張力が伝わるかもしれませんので。

こういったオタク染みた(ってか完全にオタクですけど)お話が出来るのは本当に楽しものです。もし YK さんがこのブログを見出してくださらなかったら、私は永遠に宇宙空間を彷徨う "カーズ" のような孤独さで今を生きなければなりませんでした(← 本音です)YK さんが上達されることには全力で応援させていただきますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします!
Commented by YK at 2020-08-25 13:02 x
返信下さりありがとうございます!
大椎意識します!
Commented at 2020-08-25 13:26 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2020-08-25 13:30 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by genshu-juku at 2020-08-27 20:52
(非公開コメントに対するお応えです)
前回にも増して激アツのコメントをありがとうございます!!

YKさんが周りの方達に私を紹介される際に

「国が重要無形文化財として保護すべき人」

と表現されていること・・・感無量です。


「国が重要無形文化財として保護すべき人」

あ、手が滑って もう一度ペーストしてしまいました(笑)


ましてやゴッホや太宰、墨家思想にまでなぞらえていただき、私の考えが必ず世の中から評価をもらえると明言してくださった事、心から感謝申し上げます。

それよりも何よりも、私の拙い記事を参考に YK さんが確実に上達されたお話は作者冥利に尽きるというものです!そのように誰かのお役に立てればと心から願い続けてきたものですから。

これからも記念すべき “ファン1号” さんとして末永くご声援を賜りますように!!