殺陣師の佐藤雅樹が殺陣と武道修行から得た "気付き" を易しく解説します


by Masaki Sato

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垂直に伸びる背骨_22 呼吸法後編①

呼吸法実践へのガイダンス

さて、いよいよ呼吸法の実践に入るとしよう。
次回から二回に分けて腹式呼吸の実践法を、その後に逆腹式呼吸の実践法をご紹介したいと思う。

呼吸法といえば既に世の中にはいくつものそれが出回っているわけで、ここで改めて "俺流の呼吸法" を提示させてもらう理由は 一にも二にもこの連載のテーマ『背骨の伸長』を手に入れてもらいたいが故なのだが、それだけではなく、呼吸に関わる全ての身体運動を行う方々、例えば発声法や武術、舞踊、気功法に至るまでの幅広い分野で鍛錬をされる皆さんへの上達のヒントになってもらえればという願いもある。

先ずは例として下の動画をご覧いただきたいのだが、これからご紹介する呼吸法の全ては『腹圧が一番かかる状態で背骨を真っ直ぐに伸ばす』事が基本となっている(動画では腹に息を吸い切った時)


息を吸う時に背骨が真っ直ぐになっている(例)

この様な在り方を成立させるためには、これまでも口を酸っぱくして言ってきた『骨盤を垂直方向にわずかに回転させ、その回転を胸と頭に伝達する』という身体の使い方が必要になるわけで(詳細は 過去ログ を参照されたし)

なので、ここで言う "俺流呼吸法" を一言で要約するなら

"骨盤を回転させながら呼吸法を行う"

という事になるだろう。

垂直に伸びる背骨_22 呼吸法後編①_f0074992_12051789.png
軸が真直ぐに伸びる『立つ腰』


垂直に伸びる背骨_22 呼吸法後編①_f0074992_17134317.gif
『丸まる腰』から『立つ腰』への回転


垂直に伸びる背骨_22 呼吸法後編①_f0074992_12052356.gif
『反る腰』から『立つ腰』への回転


また、この様な状態を別の言い方で表すなら

"軸を立てながら呼吸法を行う"

とも言えるのだけれど、何故それほどまでに『軸』にこだわるのかといえば『均等な腹圧をかけたいが故』であって、それが呼吸に関わる深層筋群(呼吸筋)を余すところなく使える条件だと感ずるわけで、それら呼吸筋が十全たる働きをした時にこそ『背骨の伸長』を初めとする『身体に本来備わっている真(芯)の力』が発揮されると信じるからなのだ。

この事をヨガの "ネコのポーズ" との比較で考察してみると分かりやすいと思う。ネコのポーズの様に "背骨を丸めたり反ったりしながら行う呼吸" は(その他の呼吸法にも多く見受けられる事ではあるけれど)、自ずと呼吸筋全てを柔軟にし、活性化してくれるので、呼吸を深くする事、引いては健康に寄与するという点では非常に効果的な手段ではあると思う。


背骨を丸めながら息を吸い、反りながら息を吐く

それでは、"腹圧をかける時に軸を立てる" 俺流呼吸法との違いは何かというと、端的に言って『呼吸運動において横隔膜が関与する割合』だと筆者は感じている。

ネコのポーズの様に "背骨を丸めたり反ったりしながら行う呼吸" では呼吸筋全体は満遍なく動いてはいるけれど、横隔膜に焦点を当てるのなら、さほど動いてはいない様に感じるからだ。少なくとも彼(横隔膜)のポテンシャルの100パーセントは発揮されていないはずだ。一方、"軸を立てる呼吸" において、横隔膜は正しく主役である。もはや彼なくしてこれらの(軸を立てる)呼吸は成り立たないと言っても過言ではないだろう。筆者の体感を述べるのを許していただくなら、慣れてくれば特に腰の角度など気にしなくとも、横隔膜を下げたり引き上げたりしさえすれば、腰の角度は自ずと正しいポジションに収まり、腹圧も均等にかかるものなのだ。その意味では横隔膜は『呼吸運動のスイッチ』といっても過言ではないだろう。

また外側(アウターマッスル)と内側(インナーマッスル)という括りでいうなら、 "背骨を丸めたり反ったりしながら行う呼吸" では、どちらかというと外側の腹筋や背筋等の運動が主導であり(※)、"軸を立てる呼吸" ではインナーマッスルの呼吸筋群がメインとなってそれ(呼吸)を成り立たせているともいえるだろう。

(※)あくまで割合として、ね。もちろんそれにつられて深層筋も動いているよ。

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上下に大きく動く横隔膜(赤)

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横隔膜に連動して呼吸筋群が動く


『外側主導』『内側主導』の違いを理解してもらうには、ちょっとした上達論を例に出すと解りやすいだろう。

まだ呼吸鍛錬の浅い若手俳優達の中には、大きな声を出す際に上体を屈曲させて苦しそうに声を出す者達がいる。ところが同じ劇団のベテラン俳優達は、押し並べてスッとした綺麗な立ち姿のまま、件の若手達の何倍もの声量を軽々と出したりする。そう、身体を丸めて発声する若手達は外側の筋肉(アウターマッスル)に頼り、軸の効いた姿勢で発声するベテラン達は内側の筋肉(インナーマッスル)を使いこなしているというわけなのだ。

ここからは指導者によって意見の分かれるところではあると思うが、仮に目指す目標が「美しい姿勢で大きな声量を発する」というのであれば、レッスンの初歩の段階からその様な呼吸鍛錬(軸を立てて行う呼吸)をメニューに加えるのが妥当だと思われるが如何であろうか? もちろん、「身体を丸める腹筋や呼吸法ばかりを行い、後は膨大な台詞の稽古(応用)を延々と繰り返す」昭和の根性論的な稽古法も(自分も行なってきたし)嫌いではないのだけれど、その分のエネルギーと時間を他の身体強化法や技術練習に当てた方が遥かに効率的だと思うのは自分だけだろうか?

この辺りが最初に述べた「呼吸に関わる全ての身体運動を行う皆さんへの上達のヒントになってもらえれば」という願いの根拠でもあるわけで、その運動において一番力が発揮される姿勢が『真っ直ぐ』なものである場合はここに挙げさせてもらった考え方(練習メニューに "軸を立てて行う呼吸法" を導入する)が有効だと考えられるのだ(※)この辺りの事は各自で工夫研鑽していただければ幸いである。

(※)野球のピッチングやバレーボールのサーブ等、「身体を反ったり丸めたりする運動(引いては呼吸も)」ももちろん存在するけれど。


補足
先に「熟練の俳優は軸の効いた美しい姿勢のまま軽々と大きな声を出す」と書いたが、では、そのベテラン俳優たちも、一声一声、声を発する際にいちいち腰をクイックイッと回転させているのかといえばそんな事はない(笑)ではどうなっているのかというと、(筆者の体感の話として先述したが)腰の角度が、その時、その姿勢で一番相応しいものにほぼ自動で(無意識の内に)収まるという事なのだ。これはメカニズム的にいえば、これまでご紹介してきた『横隔膜をはじめとする呼吸筋群』と、いずれ別の機会に紹介させていただく『大腰筋』というインナーマッスル等が共同して『腹圧がかかると腰(軸)が立つ』という神経回路が構築されているという事なのだが、この様に無意識の内に身体が反応してくれるレベル( "技化" ともいう)にまで "動き" を自分のものにするためには、少なくとも1万回以上の反復練習が必要になるわけで、ここからは余談になるけれど、それ程の時間と労力を注ぐ熱意があるのならば出来るだけ『良質の型』に取り組む方が良いに決まっているわけで、ここで紹介させてもらう幾つかの呼吸法が皆さんにとってのそれになれればと願う所存ではある♡



腰(骨盤)の軸の意識

これから呼吸の実践に入る前に共通認識として持っておいていただきたい情報がある。

それは "俺流呼吸法" を実践していただく際には、いつも『骨盤を水平に貫く軸』を意識してもらいたいという事。丁度、鉄製のパイプ(シャフト)がズブリと骨盤に刺さっているかの様なイメージだ(笑)


垂直に伸びる背骨_22 呼吸法後編①_f0074992_14461010.png
骨盤を水平に貫くシャフト

この意識(イメージ)をしっかりと持って行えば、骨盤は自ずと正しい回転をするようになるはずなので(下の画像参照)

垂直に伸びる背骨_22 呼吸法後編①_f0074992_14470765.gif
真っ直ぐから反る回転

垂直に伸びる背骨_22 呼吸法後編①_f0074992_14471340.gif
真っ直ぐから丸まる回転

逆に、この軸の意識を持たずに散漫な状態で行うと、下の動画の様に "背骨を動かすだけの間違った回転" になるおそれがあるので要注意。

垂直に伸びる背骨_22 呼吸法後編①_f0074992_13541208.gif
腰(骨盤)ではなく背骨を丸めている


この意識(イメージ)を喚起させるためには実際に親指でお尻の脇のちょっと凹んだところを押してあげる事が有効だ。それによって慣れていない人にもイメージがし易くなるので。

垂直に伸びる背骨_22 呼吸法後編①_f0074992_14480664.png
両手で『ダブルいいね!』

垂直に伸びる背骨_22 呼吸法後編①_f0074992_14481987.png
イメージがし易くなるよ♡



腹式呼吸時の腰のタイプ二種

お約束の通り、いよいよ次回から腹式呼吸の実践法をご紹介するわけだが、その取り組み方として二つタイプを提示させてもらっている。

その一つは『腹に息を吸う時に腰が丸まる』というタイプの人向け。

垂直に伸びる背骨_22 呼吸法後編①_f0074992_16274886.gif
腹に息を吸う時に腰(骨盤)が丸まる
[ 実践法へ ]


もう一つは『腹に息を吸う時に腰が反る』というタイプの人向けの方法論だ。

垂直に伸びる背骨_22 呼吸法後編①_f0074992_16274461.gif
腹に息を吸う時に腰(骨盤)が反る
[ 実践法へ ]

要するに、ご自分が "腰が丸まっているタイプ""腰が反っているタイプ" かという事なのだが、その見分け方としては、鏡を見ながら、若しくは他の人に確認してもらいながら、肩幅に両足を開き、なるべく全身をリラックスさせながら大きく腹に息を吸ってみて欲しい。その時の自然な身体の反応を見てどちらのタイプかを判断するわけなのだが、中には「よく分からない」という方もおられるだろうから、そういった方達にはとりあえず両方のタイプを試してみる事をお勧めする。そうしてなんとなくしっくりくる方を選んでもらえれば良いのだが、それでも分からない場合にはそのまま両方を鍛錬していただければと思う(笑)それでも全く問題は無いと思うし、『逆腹式呼吸』への移行がよりスムーズになると思うので。


そう、このように一つの『腹式呼吸』に二つのアプローチを提示するというのは、逆に読者を混乱させるだけなのかもしれないけれど、その真意は、その後にご紹介する『逆腹式呼吸』へと容易に移行していっていただきたいという事に尽きるので、ここは簡単に投げ出さず、根気よく取り組んでいただければと思う。


それでは、次回こそ腹式呼吸の実践方法・・・
腹に息を吸う時に腰が丸まる』タイプをご紹介する事としよう。


乞う御期待、乞う熟読!!


・・・続く


by genshu-juku | 2019-05-05 15:28 | 垂直に伸びる背骨(連載) | Comments(2)
Commented by YK at 2019-05-06 22:21 x
やっと新しい記事が出てうれしいです!
まだ、1回しか読んでませんけど、出たことがうれしい!
熟読してまたコメントします!
Commented by genshu-juku at 2019-05-07 18:27
お待たせしてすみませんでした(汗)

この "呼吸編" は生み出すのに本当に苦労させられました。CGも何度も何度も作り直したりして・・・約半年、生きた心地がしなかったです(笑)何しろ "呼吸" ですから、間違った表現をしてしまうと、それを試してくださった方々の健康に害を及ぼすおそれがありますので。

続きの三編(腹式呼吸二タイプと逆腹式呼吸)はこれから一気呵成にアップしますので、どうかお楽しみに!!